本作は吹きガラスの技法で作っています。ガラスは1200℃ほどで溶ける、柔らかくて流動的な素材です。その状態のガラスはシャボン玉のように膨らませることができます。そうやってスルスルとふくらましてできるただのガラス玉の中には、目に見えるものはひとつもありません。しかし本来そこには膨らませた時間や動いた動線が...

本作は吹きガラスの技法で作っています。ガラスは1200℃ほどで溶ける、柔らかくて流動的な素材です。その状態のガラスはシャボン玉のように膨らませることができます。そうやってスルスルとふくらましてできるただのガラス玉の中には、目に見えるものはひとつもありません。しかし本来そこには膨らませた時間や動いた動線が軌跡となって存在しているはずだと私は思うのです。目には見えずとも確かにそこにある軌跡を、ガラスが膨らんでいく時の力によって生成させたのが、本作の球体内部の構造です。この構造は球体の骨格であると同時に、球体が膨らむ過程でできた軌跡でもあるのです。