突然訪れた病の時代、想定された近い将来の姿が足元から揺れているのを感じました。明確であったはずの未来像は寄って立つ根拠の脆弱性を露わにしています。ですが、不透明な現在の先に煌びやかな未来像を思い描き、時を刻み、歩みを続けることこそ、止まらない時間の中で“可能事の極限”を目指して生きていく生の営みではないでしょうか。本作は東伊豆町で栽培された生花を、自宅に自然光の入る撮影スペースをつくり、
時間経過とともに咲き、枯れていく様をカメラは同じ位置のまま、異なる光の状態で
6週にわたって撮影致しました。生花の描写には、色再現に優れたカメラに、解像性能の低いレンズを用いて情報量を落とすことで未来の不透明感を演出し多重露光の技法で時間経過を1枚の写真にまとめました。背景は未来はまだ白紙であること示唆できるよう白を選びましたが、主題の強度が足りないように思いましたので、本作を下支えする、あるいは対となる裏面の役割を果たす「Past image(過去像)」を黒背景で作成し、それに呼応する形で本作を仕上げました。