この作品はさまざまな土地の森を歩き、カメラの多重露光やスローシャッターの機能を組み合わせて撮影しているシリーズ。これは複数枚撮影したデータの中から一箇所(ピクセル)ごとにデータの明るさを比較し、最も明るいデータを集めて合成し出来上がったイメージである。それは複数の被写体に優も劣もなく、淡々と比較されてできた結果であり、カメラの眼でしか記憶できない風景である。現在は日本全国のさまざまな人間によって管理されている山や森で撮影を行なっており、それは一般的に“自然”と呼ばれるものである。だが、人間の管理下にあるという意味では自然の対義語としての“人工”でもある。合成をすること、カメラによって記録されたことにおいてこのイメージも“人工的”と思われることもあるが、地球上全てのものが自然であるという言葉の定義においてはこれも“自然”である。そして、撮影した日の光や木々のシルエット、光が克明に記録されていることにおいては人間の記憶を遥かに上回る確かな証拠でもある。私たちは見ているつもりだけど見ていない。見えていないものを見るためには自分の目だけではなく、カメラというもう一つの目で見て記録することが必要だ。