写真
ネガポジ反転技法
デジタル現像
Pigment inkjet print 伊勢和紙
Year : 2020
Frame size : W457 × H608 × D26 mm
Sheet size : W330 × H483 mm
Image size : W303 × H463 mm
Ed.1/5
「From theseries " 寂として "」
脳の障害により意識の消失を起こす私は、記憶の無い自己の存在を定義できずにいます。現実も疑わしく感じられ「確かなものとは何か」という疑問が頭を埋めるのです。この疑問を明らかにする方法が、木々を主とする生命に向けたネガポジ反転という技法でした。生命から感じた印象は、視点を変えても変わらずにそこに在り、私自身の存在を示すものだったのです。写真とは本来、対象を正確に描写するものとされますが、私の写真は感覚を可視化することで自己認識を促し、アイデンティティを問うものです。写真技術の発展に伴い可能となった手法を活用しながらも、カメラが捉えた現実という描写を壊すことで、存在の確認を試みます。反転技法を施し、デジタル現像を重ねていく中で画像情報は壊れ失われていき、伝統和紙にプリントすることで滲み不鮮明な像となります。写しとった現実が崩れていく中で、確かに感じた「命の印象」だけが抽出されるのです。写真もデータやAIで補正できてしまう時代の中で確かだったことは「私が感じた」という事象だったのです。そして思わされる「自分とは何か」という問いの正体を知るために、写真を通して感覚や印象の根源に迫り、新たな視点から思考を刺激することを目的とします。