この作品は、東京のプロフェッショナルプリンターで、アーカイバルインクジェットデジタルプリンター機で印刷されています。用紙は、10年間のアーティスト活動を通じてベストとしてたどり着いたイルフォードコットン紙です。ニュース報道やドラマが流れるデジタルテレビの受信機で、接触不良によるグリッチノイズが発生した液晶画面をストレートに撮影しています。撮影後にデータを回転・トリミングすることで、元画像の文脈を削除した。アイドルレスピクチャーの視聴者は「読書欲」に突き動かされ、自己投影して幻想的な視覚的現実を生成する。 メディアの伝聞は、ホモサピエンスが共同体として見知らぬ人と学び、協力しながら生きていくための重要な要素であり、この仕組みを支えるマスメディアが現実認識のあり方を規定している。 テレビが支配的であった20世紀には、テレビから得られる情報が社会の大多数の現実認識の枠組みを標準化した。しかし、メディア環境が欺瞞的に多様化し、膨大な量の写真画像に惑わされ、巧妙なフェイク情報まで溢れる今、人類の集合体験は大きく変容しつつある。 人間はノイズの海から信号をフィルターし、星座をつなぐように物語を紡がずにはいられない。些細な事実や誤りに深く注意を払うことで、明るい洞窟の外に通じる扉が開かれ、太陽の光が差し込む。