ある時、何気なくペンの代わりにページを切り取って絵を描いてみようと思い立ちました。その瞬間から、思いがけない世界が待っていたのです。それからはコラージュの虜になり、雑誌を開くと、まだ見ぬ世界との出会いにワクワクしながら思いを巡らせました。特に、シュールレアリズムの世界が好きだったので、最初はただ形を組み合わせただけだったのですが、その形を細かく切って一から作ることに没頭しているうちに、「あれ?なるようになりました。コラージュの素材は、主に古雑誌や新聞です。特にファッション誌に惹かれ、カラフルなビジュアルページから受けた刺激をコラージュに投影していきます。組み合わせるという行為の予期せぬ、偶然の繰り返しを、糊やカッターを握る指先からのメッセージとして受け止める日々が続いた。作品に登場する「りんご」は、生まれ育った故郷、北信濃の記憶を知らず知らずのうちに具現化しているのだと思う。緑の木々の枝に実る赤い果実は、その色のコントラスト、風の香り、秋風の冷たさ、果実の存在への憧れ、そしてそれらを表現するかのように当たり前の風景がある。それはいつも私の心の中にあって、私に語りかけてきた。"ここにいるよ "と。