ネセバル湾はブルガリアで最も人気のある避暑地のひとつである。6月、7月、8月と、ここのビーチはとにかく人でにぎわう。黒海に突き出たバルカン山脈の頂上からは、まったく違った風景が広がる。息をのむような広さ、空と海の並外れた色の濃淡は、暖かい海で泳ぎ、ビーチで日焼けすることに勝るとも劣らない。ここでは深い呼吸ができ、飛翔感があり、街の家々や野原や大海原では感じられない無限の特別な感覚がある。 この状態に特別な魅力を与えてくれたのは、バルカン山脈の尾根に到達したまさにその日に起きた満月だった。日没前の繊細な空の色が、水平線の海と溶け合って、この一見儚げな月の玉を支えている。 ネセバル湾の真珠であるネセバル旧市街は、ここから見ると、海にぶつかる小さな帯にしか見えない。