この作品は私の自画像である。心理学の大家であるカール・ユングによって「ペルソナ」と提唱されている。ユングの提唱するペルソナとは、“人間が社会生活において、求められた役割を演じる機能やその一面を指す概念”であると定義される。多くの人はいくつものペルソナを有しており、どれも自分に由来するものである。この作品は2つの要素によって構成されている。1つは背景、もう1つは大きな天使のシルエットである。1つ目の背景はまず無作為に作り出した抽象的な模様の中で美しいと感じる部分のみを選び、ヱ雲型で象ったものである。これはいわゆる”よそ行き”のペルソナを示した。もう1つの天使のシルエットは、これまでの人生で孤独感を常に感じてきた私が自己の投影として描いてきた少女のモチーフをアレンジしたものである。つまり、一つの作品として、周囲と調和しようとするペルソナを表した背景の上に、決して相容れない孤独感を抱えた自己を描いた。これはいわば自己の複数のペルソナをキュビズム的に描いた作品である。自身の複数のペルソナを一つの画面上に再構成することによって、複合的なペルソナから成る自分を視覚化し認知しようと考えた。ヱ雲という和の要素を持つ背景と、西洋の宗教観の象徴である天使のシルエットをそれぞれ水彩絵具とアクリル絵具という異なる画材を主体として、敢えて互いに溶け込まないように描いたにも関わらず、調和することを諦めたくない私の想いから、題名としてアルバン・ベルクが作曲した無調性の代表曲の名を借りた。