本作群のテーマは「異質」です。ことの発端は、休憩中に眺めていたインスタのリール動画でした。それは、美容師の告知も兼ねた垢抜けビフォーアフターで、企画自体に目新しいものは感じないものの、どこか違和感を感じる動画です。登場人物は美容師、10代くらいの女の子、そしてその母親。ここで髪を切ってもらうのは女の子...

本作群のテーマは「異質」です。ことの発端は、休憩中に眺めていたインスタのリール動画でした。それは、美容師の告知も兼ねた垢抜けビフォーアフターで、企画自体に目新しいものは感じないものの、どこか違和感を感じる動画です。登場人物は美容師、10代くらいの女の子、そしてその母親。ここで髪を切ってもらうのは女の子なのですが、その子は何にもしゃべりません。終始母親が少女の気持ちや経緯を説明するのです。短くも長いその動画の最後に女の子がやっと発した言葉は「だってダッフィーがいるから」でした。その言葉に脈絡はなく、だいたい1分ほどの動画が、ホラー映画を見た後のような恐怖感を感じたのです。それは過保護すぎる母親と、コミュニケーションに問題がある娘、そしてその親子を取り上げる美容師という関係性が、ノンフィクションで存在するのかという驚きと、その異質さからくる恐怖でした。この多様性が尊重され、差別を悪とする風潮のあるこの現代でなぜ私はこの関係性が異質と感じたのだろう。今回展示する作品はこの疑問と多様性がテーマの軸となっています。