視覚は矩形ではなく、ぼんやりと円形のような球形のように見えている。私が見る景色は眼前に見える空間そのものを表したいと考えた。そのような実際に見える視覚的観点から楕円形の支持体を使用している。支持体の表面は単に平らでなく膨らみをもった形状だ。膨らむ形に対し描くことによる奥行きの表現が相反する効果を生み、平面とは違った様相で景色が見えてくる。あたかも小さな水滴に映り込む風景をつい覗き込んでしまうかのような繊細で威厳に満ちた自然の世界を、無限の奥行きと不思議なゆがみを持って、見る者を中へ中へと吸い込んでいく絵を描きたいと考えている。米唐檜(集成材スプルース)に色鉛筆、油彩