かつての木漏れ日 我が家の周りには矢竹が生い茂り、私たちの遊び場であり秘密基地でもあった。 私の故郷では矢竹は簡単に手に入り、その強さと使いやすさから漁具や農具として使われていた。 もちろん遊び道具としても優秀で、子供でも簡単に作れる弓矢や豆鉄砲(実は豆ではなく、ジャノヒゲという草の青い実から作る。祖父はこの矢竹を30センチほどの長さに切って、その土地の神様にお供えするお供え物の束を刺すのにも使っていた。 そしてこの場所では、本来の目的であろう果樹園の防風林としても機能していた。 矢竹林はとても近く、重要な場所だった。 生い茂る林の中を小道らしき道を進み、林の中に入っていく。 地面はとても柔らかく、寝転がっても痛くない。背の高い木々の間から陽光が差し込み、外界から隔離された聖域を思わせる幻想的な空間が広がっていた。どこか畏敬の念を抱かせるような、唯一無二の特別な場所だった。 そこに椅子などを持ち込んで、秘密基地のような雰囲気を演出していたのを覚えている。 大人になるにつれ、基地の存在も忘れ、家に来ることもなくなった。 寝坊して頭が重くなりながら起き上がると、窓から差し込む明るい陽光に、ふと記憶がよみがえった。