ウクライナのアーティスト、ザハール・シェフチュクは「湖上の町」で、抽象的なものと認識可能なものとの微妙な境界線を行き来する、喚起的な町並みを表現した。20世紀初頭のヨーロッパの前衛運動のエコーが構図に共鳴し、イタリアの未来派を思わせる印象を呼び起こす。意図的な油絵の技法で描かれた年季の入ったパティナは、キャンバスに時を経た魅力を与え、古代のクモの巣のようなひび割れが広がり、過ぎ去った時代を暗示している。 中央のタブローには、スケーターや歩行者が残したと思われる氷の跡が描かれ、石のようなグレーブルーの要素に囲まれ、青々とした緑の自然を思わせ、グレーと濃い赤の建造物で区切られたスカイラインが見える。ところどころ生キャンバスのように削ぎ落とされた冬の空が荒涼とした背景となり、この絵のメランコリックな雰囲気を際立たせている。 抽象化ギリギリまで形を削ぎ落とすシェフチュクの傾向は明らかだ。彼の作品は、必要なものだけが残るまで形を単純化することに言及した彼の声明の証となっている。豊かな学問的背景と進化する作風をもとに、シェフチュクは具象と抽象の境界線を曖昧にし、見る者を内省的な旅へと誘い、抽象の領域に戻る前に、一瞬の認識を見極めるよう挑んでいる。 1992年生まれのザハール・シェフチュクは、画家や製図家としての実績のほかに、キエフの国立美術建築アカデミーで教育を受けた天才的な才能の持ち主である。アカデミックな写実主義から、常に表現主義をほのめかしながら、具象と抽象の間を行き来する作風へと、彼の旅路は凝縮されている。