この作品のモチーフは、日本国憲法に署名する昭和天皇の記念碑的な写真です。昭和天皇は、生前の昭和天皇を知らない若い世代を中心に、ある種の象徴的なキャラクターになっていると言えるでしょう。一方で、昭和天皇が芸術作品の中で実際にアイコン化されて描かれると、若い世代を含めて多くの人が怪訝な顔をします。日本では、天皇を描くことはいまだにタブーとされています。天皇といえば、天皇制学者の武田清子さんの言葉が思い浮かびます。天皇制はカサブタである。天皇制はかさぶたのようなもので、急に剥がそうとすると血が出ますが、徐々に段階的に消えていくものです。私が天皇を描くという行為が、そのカサブタをゆっくりと剥がすことに貢献できればと思います。