雲肌麻紙に岩絵具で描いています。自分で一つの物語を創作し、その挿絵をイメージしました。森の中を、独りで歩いていた。暗い森だった。背の高い木々が、光を遮っているのだろう。あちこちに、名前の分からない草が、ぼぅぼぅと生えている。分からないといえば、私も何処へ向かおうと思って、歩き始めたのか分からない。どこから来たのかは、尚のこと分からない。考えようとすると、頭の中が締め付けられるようだ。何処へ向かうかも分からずに歩き続けている。どこから来たのかも分からずに歩き続けている。すると、花を見つけた。花びらが柔らかく開いて、ポゥッと、鈍く光っているようだ。嗚呼、あれは私の心だと、懐かしく思った。同時に、私は人間だったことを思い出した。――ただいま。「おかえり」