作品に配置されている具象は、龍と虎です。これは、龍虎相博という日本では、古くから金屏風で描かれている日本の代表的な芸術です。金屏風の歴史は古く、中国の紀元前200年代、漢の時代から存在する物です。私はこれを金白ではなく、銀白を使いモダンでスタリッシュなイメージになるように再構築しています。
その中心に位置する目は、禅の正方眼蔵にとキリスト教、プロビデンスの目に由来しています。お釈迦様の言葉による教えが、後の経典になったのに対し、目に見えない教えこそが大事だという思想が後の禅になりました。それが正方眼蔵です。仏教が目指すのは、差別のない世界です。正方眼蔵の眼は無分別智といい、差別を取り払った状態を表します。お釈迦様は、言葉は自由に解釈が出来、時代によって解釈も意味も変わると説きました。だからこそ、禅芸術は全てを受け入れる多様性と不完全の美として発展して行きました。宗教や、人種を超えて共存する世界こそ、これからの国際社会には必要です。この眼を中心部に描くスタイルは自分の芸術性を表すために描き続けているのです。
また色合いなどは、全相型を取り入れています。全相型は色に制限をかけないことで自由を表す代わりに、色のバランスを保つ事が非常に難しいと言われる配色です。ロシアのカンディスキーにも見られます。
この全相型は経済のバランスを保つ難しさにも似ており、自分の作家性「NO BORDER IN THE WORLD」「VISUAL ROCK PAINTer」という既存の枠組みに囚われない新しい芸術という作家性に合うので使っています。