「紋次郎」はアジア、日本に伝わる伝統的な文様をモチーフにして、自分の手法(アクリル絵具の積層と研削)で絵画化するシリーズです。本作「19」も前作「18」同様に、江戸時代の「あぜ道文様」を素材にしていますが、自分で拡大して描き直した紋様図案を元に制作しています。金は永遠を現す色とも言いますが、昔から変わらない風景や人の営みに対する自分の愛情が滲んでいる作品だと思います。素材となる紋様から作成した図案をキャンバスに転写、図案と作品に合った絵具のレイヤー構成で積層し、耐水サンドペーパーで水をかけながら研削していきます。紋様の図像と、絵具の発色具合、双方のバランスで一番良いと思える状態になるまで、画面チェックと研削を繰り返し、完成になります。キャンバスは表裏両面に入念な地塗りによるプレパレーションの後、一旦仮板の上に張ります。画面側に部分、ベタ合わせて20層以上の描写としての塗りを重ねています。仮板の上で制作し、完成後は清掃乾燥させてから木枠に張って完成となります。画面は、削り出しているため平滑で、ふきんなどで拭き掃除もできます。