私たちは見たいものを見て、信じたいものを信じる。遠くで見えたものが真実ではない。ある日、映画館で1組のカップルがいた。そのカップルはポップコーンを買いながら映画の半券を思い出に取っておこうと話している。しかし、受け取ったポップコーンのレシートは捨ててしまった。なぜ、映画の半券は取っておくのに、ポップコーンを買ったレシートは捨てるのだろう?ポップコーンを買った出来事も大事なデートの1ページなのに。僕はそのレシートに新たな価値を与え、記憶のリサイクルができないかと考えた。レシートは、当たり前で忘れてしまう記憶が詰まったものかもしれない。そんな誰かの時間やログの積み重なったイメージが、社会のささくれを作っているのではないか。レシートはリサイクルができない素材である。全国で1年間に消費されるレシートは、およそ5.4万トン。A4サイズのコピー用紙135億枚に相当し、水質汚染や森林伐採にも影響している。これは資源も記憶もおざなりにしている証ではないか?と僕はもどかしくなる。日本全国から集めたレシートを使用し、劣化を防ぐため、独自の素材でコラージュを施した。いつかレシートがなくなる数十年後、私たちの生活ログが文化的資料として残ることを意図している。