具象、抽象の分け方は絵画においてはほとんど意味を為さないのだが、世の中は便宜上そのような区分けをする。しかし抽象は具象であり具象は抽象であるという禅問答のような言い方ができる。色と線で作られる画面に過ぎないものを、人は経験的に脳が記憶している事柄で見聞したことのある物を具象的事象として捉え、見聞してない物を抽象的事象と捉える。純粋抽象も純粋具象も実は存在しない。色彩と線は私自身が決めた自由と制約の中で互いに補い合い響き合う地点を探し、言葉を使わない詩を紡ぎ始める。社会通念の記号や暗号と文化宗教的ロジックは破られ、新たな地平を見る。より深くより普遍へと色と線は歩み出す。