鬼の起源は今からおよそ1200年前の平安時代まで遡る。科学が発展していない時代の疫病や災害などの「視えない恐怖」に抗う人々によって具象化された姿が起源であり、様々な伝説や文献となって現在にまで伝承している。複雑化した現代社会において SNSを通じた関係構築は大きな割合を占め、それはアイコン化した人間関係や情報の拡散、表現の匿名性といった「見えすぎてしまう恐怖」を生み出している。とはいえ私はこの恐怖を無くすことはできないように思う。時を経るごとに鬼は退治するものから対峙するものに変わっているからだ。私は最近"鬼"を畏怖するものとして扱わず日常に溶け込む普遍的な存在として向き合うことが増えた。そうすると自身の記憶や経験の中の"鬼"に出会い、それが時には対外的な人格やペルソナの1つになり、目まぐるしく変化する現代社会から守ってくれていることに気づくのだ。そんな愛すべき存在に漫画(carton)と鬼(demon)を組み合わせた造語である『Toon Demon 』と名付け、制作を通じて向き合っている。私はこのToon Demon に絵画制作というある種閉鎖的な対峙方法だけでなく、鑑賞者と対峙することで得られる、鏡写しのような効果を期待している。