橋本はこのシリーズで、時間と個人の関係を具現化しています。橋本は「現在という時間は追跡可能である」という考えを背景画のテーマとして描いています。その上に散りばめられた木製の彫刻が個人を表しています。そして、川のように流れていく時間の上に浮かぶ個人の不確かな存在を暗示しています。
このアイデアは、新自由主義、アイデンティティ、パーソナリティなどの新しい無意味な言葉が古いコミュニティを破壊している現代社会を観察したことから生まれました。言葉とは逆に、皮肉なことに、言葉が流通すればするほど、個人の存在感は希薄になっていきます。
彼は、「(2011年の)東日本大震災のとき、本当に揺れたのは地面ではなく、日本国民としてのアイデンティティだった。私」や「私たち」という概念が、揺れによって一人ひとりの中で揺らいでいるような気がしてなりません」。