情報が溢れる現代社会において、情報そのものの価値は日々薄れていくように感じます。
その状況に反して、私たちはこれらに魅了され、情報の受信と発信から離れられなくなっています。
そして情報で溢れる社会の中で、私たちは自身のアイデンティティを失いかけているようにも感じます。
この作品は特定の人物をモチーフに、キャンバス上に大量の絵具を塗布して描いたポートレートです。
情報における比喩表現として色を扱い、感覚や思考を形にするように、様々な色を何度も重ね合わせることで人物の情報は失われ、この工程を繰り返すことで人物から独自の情報が生成されます。
人はどんなに抽象的なものでも、目に映るものに意味を見出す能力があります。それは自らにとって本当に重要な情報を求めるように。
この作品を提示することで、現代社会を評価し、時代をあるがままに見る「真のアイデンティティ」とは何かを問いたいと考えました。