この作品は、横浜市金沢区にある野島を題材にしています。その場所で感じたイメージを、単純化した形や色、絵具の質感に置き換え、キャンバスに配置しました。画面には、野島、平潟湾、海面に映る野島、カモメ、野島展望台に続くらせん状の道、雄勝橋、コンクリートの道、鉄の柵などが描かれています。画面に配置された構成要素は、見る人が名前を認識できないように簡略化されている。絵から名前をなくすことで物語を失い、絵の構造に意識を誘導することを目的としています。画面の構成では、ピカソの3人の音楽家を参考にしています。画面を構成する際に古典作品の構図を引用するのは、古来より画家がよく用いてきた手法ですが、この作品は、鑑賞者がこの作品から感じ取る視覚的なイメージを通して、集合的な想像力の中に存在しています。また、共通のイメージを共有する試みもあります。私が絵画を制作する際に参考にしているのは、近代美術以降の西洋の絵画手法です。絵画の伝統に基づいて、現代の感覚や経験を絵画に反映させることを目的としています。キャンバスにはアクリル絵の具を使用しています。アクリル絵の具を使う理由は、比較的耐久性があることと、様々なメディアが開発されているので、様々な質感を表現することができ、画面の制作の自由度が高いからです。適切な環境で展示・保管されていれば、通常のアクリル絵の具で描いた作品と同等の耐久性があります。一つ一つのパーツを丁寧に考えて描いているので、制作期間は約3週間です。キャンバスの裏には、サイン、制作年、タイトルが書かれています。