この作品は、横須賀市のうみかぜ公園から見た猿島をモチーフにしています。その場所で感じたイメージを、簡略化した形や色、絵具の質感に置き換えてキャンバスに配置しました。画面上に配置された部品は、見る人が名前を認識できないように簡略化されています。絵から名前をなくすことで物語を失い、絵の構造に意識を誘導することを目的としています。屏風の構成にあたっては、葛飾初代の作品「富嶽三十六景」(神奈川沖)を参考にしています。波が砕けている海の向こうの島の風景と、神奈川沖の冨嶽三十六景のイメージを重ね合わせています。画面の構図を構成する際に名作から構図を引用するのは、昔の画家がよく使った手法です。私が絵画を制作する際には、近代以降の西洋絵画の手法を参考にしています。絵画の伝統を踏まえた上で、現代の感覚や経験を絵画に反映させることを目指しています。キャンバスにはアクリル絵の具を使用しています。アクリル絵の具を使う理由は、比較的耐久性があることと、様々なメディアが開発されているので、様々な質感を表現することができ、画面の制作の自由度が高いからです。適切な環境で展示・保管されていれば、通常のアクリル絵の具で描いた作品と同等の耐久性があります。一つ一つのパーツを丁寧に考えて描いているので、制作期間は約3週間です。キャンバスの裏には、サイン、制作年、タイトルが書かれています。