Layers of Color series = non figurative, spontaneous, phenomenal paintings
2015年から始めた「Layers of Color」シリーズは、具象的モチーフの構造から解放されたところで、純粋視覚現象のような絵画を追求しています。本作品は2019年の第4作、シリーズ通算第39作です。シリーズで一番小さな作品の一つ、サムホール大の小品です。明確なテーマも、メッセージも、モチーフも、プランも無いところから、アクリル絵具の積層と研削によって、完成と思われる画面を(向きも含めて)決定するというのが、本シリーズの基本的手法です。本作は触覚性とレイヤーの絡み合いが強く出るようにしたいという意図の元制作を始めました。それ以外は、即興的な判断による塗り重ねと削りで完成画面に至っています。本シリーズの制作動機は、「絵画にしかできないこと」を私なりに追求してみる良いやり方だと思ったからです。支持体上に絵具によってしか存在し得ない光景。物理的な結晶としての絵画。そんな作品をを見てみたいという私の欲求の産物と言えます。キャンバスは表裏両面に入念な地塗りによるプレパレーションの後、一旦仮板の上に張ります。画面側に部分、ベタ合わせて20層以上の描写としての塗りを重ねます。そして、水をかけながら耐水サンドペーパーで研削しながら画面を造っていきます。仮板の上で制作し、完成後は清掃乾燥させてから木枠に張って完成となります。画面は、削り出しているため平滑で、ふきんなどで拭き掃除もできます。絵画の特性の一つ、「重層的なマジック」を活かしきること。制作を志した頃からの、私の欲求に沿ったやり方を1999年に見つけました。以来、「アクリル絵具の積層と研削」という一貫した技法・マチエールでペインティングの可能性を追求しています。