2015年から始めた「Layers of Color」シリーズは、具象的モチーフの構造から解放されたところで、純粋視覚現象のような絵画を追求しています。本作は2022年の3作目、シリーズ全体で55作目にあたります。明確なテーマも、メッセージも、モチーフも、プランも無いところから、アクリル絵具の積層と研削によって、完成と思われる画面を(向きも含めて)決定するというのが、本シリーズの基本的手法です。偶発的に生まれるディテールの面白さを活かしながら、キャンバス上の純粋視覚現象として、ひとつの画像に導いていきます。本作はサムホールサイズで、このシリーズ中最も小さい作品です。しかし、本シリーズの作品は、サイズに関係なくそれぞれが固有のビジョンを持って独立しています。この「2203」も同時期に制作した「2202」も、一つの完成した絵画作品として提案しています。キャンバスは表裏両面に入念な地塗りによるプレパレーションの後、一旦仮板の上に張ります。画面側に部分、ベタ合わせて20層以上の描写としての塗りを重ねます。そして、水をかけながら耐水サンドペーパーで研削しながら画面を造っていきます。仮板の上で制作し、完成後は清掃乾燥させてから木枠に張って完成となります。画面は、削り出しているため平滑で、ふきんなどで拭き掃除もできます。絵画の特性の一つ、「重層的なマジック」を活かしきること。制作を志した頃からの、私の欲求に沿ったやり方を1999年に見つけました。以来、「アクリル絵具の積層と研削」という一貫した技法・マチエールでペインティングの可能性を追求しています。