2001年から2008年にかけての不定期連作「水に杭」シリーズは数年の中断を経て、2011年「杭」にタイトル変えして、再度展開しました。
本作は「杭」シリーズの26作目です。
「水に杭 / 杭」シリーズは、水景の構図を用いながら抽象度が高く、ミニマルな画面スタイルが特徴です。
メタリック色をメインにした落ち着いたテイストの作品になっていますが、点在する杭、近景の構造物、ノイジーで触覚性の高い発色など、これまでのシリーズ展開で培ったノウハウをフィードバックしています。
キャンバスは、表裏両面に地塗り施しています。
下塗りと面の粗さを調節する削りによるプレパレーションの後、部分、ベタ合わせて20層以上の塗りを重ねます。
そして、水をかけながら耐水サンドペーパーでの研削を、完成画面が見つかるまで繰り返します。
本作はキャンバスを合板パネルに張っています。
作品裏面設置の際、ピン、フック類も引っ掛けられます。
また、削り出しによる平滑なマチエールなので、作品をふきん等で拭き掃除することもできます。
絵画の特性の一つ、「重層的なマジック」を活かしきること。
制作を志した頃からの、私の欲求に沿ったやり方を1999年に見つけました。
以来、「アクリル絵具の積層と研削」という一貫した手法で絵画の可能性を探求しています。