2015年から始めた「Layers of Color」シリーズは、具象的モチーフの構造から解放されたところで、純粋視覚現象のような絵画を追求しています。本作は2019年の1作目、シリーズ全体で36作目にあたります。
明確なテーマも、メッセージも、モチーフも、プランも無いところから、アクリル絵具の積層と研削によって、完成と思われる画面を(向きも含めて)決定するというのが、本シリーズの基本的手法です。
本作「1901」では線的なモチーフ断片をフリーハンドで描くことから始まり、以降はタッチや色使いを変えながら最終的にピンク色のベースカラーでまとめるというレイヤー構造になりました。
本シリーズの制作動機は、「絵画にしかできないこと」を私なりに追求してみる良いやり方だと思ったからです。
支持体上に絵具によってしか存在し得ない光景。物理的な結晶としての絵画。
そんな作品をを見てみたいという私の欲求の産物と言えます。
キャンバスは表裏両面に入念な地塗りによるプレパレーションの後、一旦仮板の上に張ります。
画面側に部分、ベタ合わせて20層以上の描写としての塗りを重ねます。
そして、水をかけながら耐水サンドペーパーで研削しながら画面を造っていきます。
仮板の上で制作し、完成後は清掃乾燥させてから木枠に張って完成となります。
画面は、削り出しているため平滑で、ふきんなどで拭き掃除もできます。
絵画の特性の一つ、「重層的なマジック」を活かしきること。
制作を志した頃からの、私の欲求に沿ったやり方を1999年に見つけました。
以来、「アクリル絵具の積層と研削」という一貫した技法・マチエールでペインティングの可能性を追求しています。