2015年から始めた「Layers of Color」シリーズからは、具象的なモチーフの構造から解放されたところで、純粋視覚現象のような絵画を追求しています。本作品は、同シリーズの第31作です。
明確なテーマも、メッセージも、モチーフも、プランも無いところから、塗りや削りの工程が一つ終わるごとに、次の工程をジャッジしていき、やがて完成と思われる画面が(向きも含めて)決定されるのが、このシリーズの基本ルールです。
本作では色使いが南国の花のようであるのが特徴です。同時期に並行して制作していた具象的な花の作品に使用した色達を、フリーなタッチと順番で積層し、削り出して生まれた画面です。
パネルは表裏両面貼り、裏面、側面にも地塗り、画面には直接アクリル絵具がのっていますが、下塗りと木目を潰す削りによるプレパレーションの後、部分、ベタ合わせて20層以上の描写としての塗りを重ねます。そして、水をかけながら耐水サンドペーパーで研削していきながら画面を造っていきます。
画面側面はブラック仕上げ、裏面のスリットはパネル内の通気を兼ねたダクトですが、設置の際のピン、フック類も引っ掛けられます。画面は、削り出しているため平滑でふきんなどで拭き掃除もできます。
絵画の特性の一つ、「重層的なマジック」を活かしきること。支持体上に絵具によってしか存在し得ない光景。
制作を志した頃からの、私の欲求に沿ったやり方を1999年に見つけました。
以来、「アクリル絵具の積層と研削」という一貫した技法・マチエールでペインティングの可能性を追求しています。