活動初期、抽象的な画面内に具象的なシルエットを入れることを試した作品です。
青銅が錆びたような緑青白ベースのテクスチュアの中を、人影のようなモチーフが揺めきながら覗いている。
時間を感じる叙事詩のような表現を意図した作品です。
1999年に見つけた「アクリル絵具の積層とサンドペーパーによる積層で画面を構築する手法=Layering」を用いて、有機的抽象スタイルでスタートした私のキャリアですが、やがて、抽象的で自発的な画面生成に対し「どこを完成とするべきか」「何を伝えたいのか」について迷いが生じてきました。
そこで、手法はそのまま継続しながら画面構成に具象的なモチーフを導入していこうということで2001年ごろから、まずはシルエット2002年ごろからシリーズ展開したのが、本作を含む「再会シリーズ」です。(2005年ごろまで展開) この「再会シリ具象的なシルエットを、レイヤー構成に組み込んでみることを始めました。そういう流れの中で、2001年に本作は制作されました。
使用パネルは表裏両面貼り。画面、側面、裏面と全面に地塗り。画面背景色と同色が側面にも塗り重ねられています。画面では、下塗りと木目を潰す削りによるプレパレーションの後、部分、ベタ合わせて20層以上、描写として塗りを重ね、水をかけながら耐水サンドペーパーでの研削を、完成画面が見つかるまで繰り返します。 作品裏面のスリットはパネル内通気ダクトですが、設置の際、ピン、フック類も引っ掛けられます。
また、平滑なマチエールなので作品をふきん等で拭き掃除することもできます。
ペインティングの特徴のひとつである「重層的なマジック」を利用して、支持体の上にのみ存在するスペクタクルを実現する。
1999年以来「アクリル絵の具の積層と研磨」という一貫した技法とマチエールで 絵画の可能性を追求しています。