初期の風景作品です。タイトルは古代インド聖典、リグ・ヴェーダからの引用です。時間が流れ、生命が生まれ、存在し、消滅する。。。世界についての抽象的な感覚を、具象的なモチーフのある風景画として表現しようとした作品です。2001年に始めた「水に杭」シリーズから風景画の構造を、2002年からの「再会」シリーズで生き物等の具象的なモチーフを、それぞれ取り入れて展開してきました。2つのシリーズからのフィードバックによって生まれたのが本作です。また、本作は2006年VOCA展(上野の森美術館)出品作「Thermoscape」の、オリジナルバージョンでもあります。参考情報「Waterscape 」の展示風景: https://artsticker.app/works/41117
制作の流れとしては、日本画の大下図のような原寸大の線画を、画面とは別のトレーシングペーパーに作成します。そして塗り重ねる色のレイヤー構成をプランニングしますが、モチーフの固有色には拘らず、絵画的に良いと感じる色のチョイスをします。線的にも色面的にもプランがある程度決まったら、トレーシングペーパー上の線画をパネル上に転写し、本画制作に入ります。使用パネルは表裏両面貼り。画面、側面、裏面と全面に地塗り。画面背景色と同色が側面にも塗り重ねられています。画面では、下塗りと木目を潰す削りによるプレパレーションの後、部分、ベタ合わせて20層以上、描写として塗りを重ねます。そして、水をかけながら耐水サンドペーパーでの研削を、完成画面が見つかるまで繰り返します。藤本の絵画作品は、1999年から現在まで「アクリル絵具の積層と研削」という一貫した技法によって制作されています。(私的には"Layering”と呼んでいます。)絵画の特性の一つ、「重層的なマジック」を活かしきるためのツールが"Layering"で、この技法をツールにして絵画の可能性を追求しています。