2001年から2008年にかけての不定期連作「水に杭」シリーズは数年の中断を経て、2011年に「杭」にタイトルを変えて再展開しました。流動性や静寂性が表現できるのであれば「水面らしい」固有色には拘らないという方針は前シリーズと同じですが、本シリーズでは杭以外のモチーフも追加したり、杭と関係づけて配置したりするなど、「いろんな杭の風景」を構築することにもチャレンジしています。本作は同シリーズ第18作目です。シリーズ内でも、抽象度が高く、ミニマルな画面スタイルが特徴です。メタリック色をメインにした落ち着いたテイストの作品になっていますが、画面中央、点在する杭が連なる部分などはこれまでのシリーズ展開で培ったノウハウがフィードバックされています。使用パネルは表裏両面貼り。画面、側面、裏面と全面に地塗り。画面背景色と同色が側面にも塗り重ねられています。画面では、下塗りと木目を潰す削りによるプレパレーションの後、部分、ベタ合わせて20層以上、描写として塗りを重ねます。そして、水をかけながら耐水サンドペーパーでの研削を、完成画面が見つかるまで繰り返します。作品裏面のスリットはパネル内通気ダクトですが、設置の際、ピン、フック類も引っ掛けられます。また、削り出しによる平滑なマチエールなので、作品をふきん等で拭き掃除することもできます。