本作は、2001年から始めた「水に杭」シリーズの第36作です。
シンプルな構成のスタイルながら、構図や色使い、支持体のサイズ感も含めていろんなチャレンジを盛り込みながら、楽しく展開しました。
本作は、「たくさんの小さな杭たくさん、規則的にある配置」と、「熱感があるけど静かな色面」との対比で構成されています。それまでのシリーズ作とはまた違った画面を構築したいという意図で制作されました。
また30cmスクエアという画面スペックは、日本の一般的な住宅事情にもフィットしやすく、本作以外でもいろんな自分の作品で採用されています。
使用パネルは表裏両面貼り。画面、側面、裏面と全面に地塗り。画面背景色と同色が側面にも塗り重ねられています。
画面では、下塗りと木目を潰す削りによるプレパレーションの後、部分、ベタ合わせて20層以上、描写として塗りを重ねます。そして、水をかけながら耐水サンドペーパーでの研削を、完成画面が見つかるまで繰り返します。
作品裏面のスリットはパネル内通気ダクトですが、設置の際、ピン、フック類も引っ掛けられます。
また、削り出しによる平滑なマチエールなので、作品をふきん等で拭き掃除することもできます。
アクリル絵具の積層と研削で、絵面を描き出していくこと(個人的に「レイヤリング」とします。)は、非対象フリー絵画「Layers of Color」と変わらないので、本シリーズの作品においても、そのマチエールや発色感は一貫しています。
絵画の特性の一つ、「重層的なマジック」を活かしきること。
支持体上に絵具によってしか存在し得ない光景。
制作を志した頃からの私の欲求に沿ったやり方「レイヤリング」1999年に見つけました。
以降、この「レイヤリング」でペインティングの可能性を追求しています。