本作は、2001年から始めた「水に杭」シリーズの第21作です。画面の縦横比を超横長にしていることと、ダークグリーンの色面と明るい光のような杭という色使いが本作の特徴です。本シリーズは、基本的に「杭の配置」と「色面」の対比だけのシンプルな構成なので、画面サイズ、縦横比という支持体のスペックも大変重要なファクターになります。支持体の縦横比については規格比率だけに拘らないで展開しています。その中で本作のように「オブジェとしての絵画の存在感」も感じる超横長の支持体にもチャレンジしています。ダークグリーンの色面は、独特の落ち着いた雰囲気が出るパレットで、シリーズ「水に杭 17」で初めて用いました。とても新鮮な感触があり、完成後すぐに出品した展覧会でも好リアクションで売約されました。以降のシリーズ展開でもしばしば採用する「自分らしいパレット」の1つです。使用パネルは表裏両面貼り。画面、側面、裏面と全面に地塗り。画面背景色と同色が側面にも塗り重ねられています。画面では、下塗りと木目を潰す削りによるプレパレーションの後、部分、ベタ合わせて20層以上、描写として塗りを重ねます。そして、水をかけながら耐水サンドペーパーでの研削を、完成画面が見つかるまで繰り返します。作品裏面のスリットはパネル内通気ダクトですが、設置の際、ピン、フック類も引っ掛けられます。また、削り出しによる平滑なマチエールなので、作品をふきん等で拭き掃除することもできます。アクリル絵具の積層と研削で、絵面を描き出していくこと(個人的に「レイヤリング」とします。)は、非対象フリー絵画「Layers of Color」と変わらないので、本シリーズの作品においても、そのマチエールや発色感は一貫しています。絵画の特性の一つ、「重層的なマジック」を活かしきること。支持体上に絵具によってしか存在し得ない光景。制作を志した頃からの私の欲求に沿ったやり方「レイヤリング」1999年に見つけました。以降、この「レイヤリング」でペインティングの可能性を追求しています。