「永遠トリオ」とは、「3つの存在」が点在している風景画につけるシリーズタイトルです。「消滅」は、森林をモチーフにした作品につけるシリーズタイトルです。本作は、それらの要素を両方含むためこのようなタイトルになりました。インスピレーションの源となった風景は沖縄県石垣島内の、とある森です。そのイメージをもとに原寸大のドローイングをトレーシングペーパーに描きます。ドローイングは写真をベースにしていますが、写真を忠実に再現することは意図していません。私のメチエを構築して絵の具の中にしかない光景を生み出すための起点として作用します。つまり「森の構造を利用して自由に絵画化する」作業をして生まれた作品と言えますし、これは藤本の具象的なソースに対する基本的な考え方でもあります。制作の流れとしては、日本画の大下図のようにモチーフの配置を主に記した原寸大の線画を、画面と別のトレーシングペーパーに作成します。そして塗り重ねる色のレイヤー構成をプランニングします。線的にも色面的にもプランがある程度決まったら、トレーシングペーパー上の線画をパネル上に転写し、本画制作に入ります。使用パネルは表裏両面貼り。画面、側面、裏面と全面に地塗り。画面背景色と同色が側面にも塗り重ねられています。画面では、下塗りと木目を潰す削りによるプレパレーションの後、部分、ベタ合わせて20層以上、描写として塗りを重ねます。そして、水をかけながら耐水サンドペーパーでの研削を、完成画面が見つかるまで繰り返します。作品裏面のスリットはパネル内通気ダクトですが、設置の際、ピン、フック類も引っ掛けられます。また、削り出しによる平滑なマチエールなので、作品をふきん等で拭き掃除することもできます。アクリル絵具の積層と研削で、絵面を描き出していく手法は、非対象フリー絵画「Layers of Color」と変わりません。藤本の作品は画面スタイルにバリエーションがありながら、各作品のマチエールや発色感は一貫しています。絵画の特性の一つ、「重層的なマジック」を活かしきること。支持体上に絵具によってしか存在し得ない光景。制作を志した頃からの私の欲求に沿ったやり方「レイヤリング」1999年に見つけました。以降、この「レイヤリング」でペインティングの可能性を追求しています。