2015年から始めた「Layers of Color」シリーズからは、具象的なモチーフの構造から解放されたところで、純粋視覚現象のような絵画を追求しています。
本作品は、2016年に入ってからの第12作、同シリーズ通算第21作です。
明確なテーマも、メッセージも、モチーフも、プランも無いところから、塗りや削りの工程が一つ終わるごとに、次の工程をジャッジしていき、やがて完成と思われる画面が(向きも含めて)決定されます。
本作は、この時点で一番小さいスクエアサイズの作品を作ろうということだけ決めて制作を始めました。
あとはフリーな流れで自然発生的な展開で、この画面に収束したわけですが、「オレンジ色を使う」という方針も塗りを重ねながら決まっていきました。
結果、大きさの割には密度のある画面にはなって、他の大きな作品にも後々繋がっていくような感覚を残して制作を終えました。
キャンバスは表裏両面に入念な地塗りによるプレパレーションの後、画面側に部分、ベタ合わせて20層以上の描写としての塗りを重ねます。そして、水をかけながら耐水サンドペーパーで研削していきながら画面を造っていきます。
仮板の上で制作し、完成後は、清掃して乾燥させてから木枠に張るので、制作上、衛生上にも支障なく、マチエール特性や発色のクオリティもキープできていると思います。
画面は、削り出しているため平滑で、ふきんなどで拭き掃除もできます。
絵画の特性の一つ、「重層的なマジック」を活かしきること。
その支持体上に絵具によってしか存在し得ない光景。物理的な結晶としての絵画。
制作を志した頃からの、私の欲求に沿ったやり方を1999年に見つけました。
以来、「アクリル絵具の積層と研削」という一貫した技法・マチエールでペインティングの可能性を追求しています。