2015年から始めた「Layers of Color」シリーズからは、具象的なモチーフの構造から解放されたところで、純粋視覚現象のような絵画を追求しています。
本作品は、2019年の第5作、シリーズ累計で第40作です。
超横長の支持体が本作の特徴ですが、シリーズ「1505」など、これまでに自分がしばしば試みる比率です。
制作面で独特の空間構成ができる面白さがありますし、設置面でもパブリック、プライベート問わず、空間へのマッチングも良い、とても興味深いモジュールです。
パネルワークだった「1505」のエヴォリューションモデルとして、本作「1905」ではキャンバスワークで制作しています。
明確なテーマも、メッセージも、モチーフも、プランも無いところから、塗りや削りの工程が一つ終わるごとに、次の工程をジャッジ、その繰り返しの果てに、完成と思われる画面が(向きも含めて)決定されるという、スポンテニアスなプロセスは、同シリーズの一貫したルールで、本作も同様です。
キャンバスは表裏両面に入念な地塗りによるプレパレーションの後、画面側に部分、ベタ合わせて20層以上の描写としての塗りを重ねます。そして、水をかけながら耐水サンドペーパーで研削していきながら画面を造っていきます。
仮板の上で制作し、完成後は、清掃して乾燥させてから木枠に張るので、制作上、衛生上にも支障なく、マチエール特性や発色のクオリティもキープできていると思います。
画面は、削り出しているため平滑で、ふきんなどで拭き掃除もできます。
絵画の特性の一つ、「重層的なマジック」を活かしきること。
その支持体上に絵具によってしか存在し得ない光景。物理的な結晶としての絵画。
制作を志した頃からの、私の欲求に沿ったやり方を1999年に見つけました。
以来、「アクリル絵具の積層と研削」という一貫した技法・マチエールでペインティングの可能性を追求しています。