2015年から始めた「Layers of Color」シリーズからは、具象的なモチーフの構造から解放されたところで、純粋視覚現象のような絵画を追求していますが、同シリーズ第6作である本作は、具象的なモチーフのレイヤーを入れ込んだ構造になりました。
当時の過渡的な制作展開が反映された「特異点」のような作品です。
パネルは表裏両面貼り、裏面、側面にも地塗り、画面には直接アクリル絵具がのっていますが、下塗りと木目を潰す削りによるプレパレーションの後、部分、ベタ合わせて20層以上の描写としての塗りを重ねます。そして、水をかけながら耐水サンドペーパーで研削していきながら画面を造っていきます。
この「塗り重ね→削りプロセス」は1タームであることが多いですが、それはあくまで画面を決定してきた結果です。場合によって画面をモニターしながら自分が納得いくまで、このタームを繰り返すこともあります。
本作「1506」はタイトルの通り、2015年に制作を開始、同シリーズのやり方に沿って、明確なテーマも、メッセージも、モチーフも、プランも無いところから、「塗り→削りプロセス」を1ターム終了したところで、ジャッジに悩み一旦寝かせて、他の作品造りをしていました。
年が明けて2016年になってから「樹のシルエット」レイヤーを入れ込んで再開するというアイデアが浮かび、再び「塗り→削りプロセス」をもう1ターム行って完成になりました。
おそらく、制作にコミットする私自身のマインドとフィジカルの中に、残滓のように残っていたモチーフ「樹のレイヤー」を使うことで、次のステップに進む推進力になったように思います。
絵画の特性の一つ、「重層的なマジック」を活かしきること。支持体上に絵具によってしか存在し得ない光景。
制作を志した頃からの、私の欲求に沿ったやり方を1999年に見つけました。以来、「アクリル絵具の積層と研削」という一貫した技法・マチエールでペインティングの可能性を追求しています。