2015年から始めた「Layers of Color」シリーズからは、具象的なモチーフの構造から解放されたところで、純粋視覚現象のような絵画を追求しています。本作品は、同シリーズの第5作です。本作品は、超横長の支持体が特徴の一つですが、これは、これまで自分がしばしばチャレンジするサイズです。制作面では独特の空間構成ができますし、設置面でもパブリック、プライベート問わず空間にマッチングしやすい興味深いモジュールです。明確なテーマも、メッセージも、モチーフも、プランも無いところから、塗りや削りの工程が一つ終わるごとに、次の工程をジャッジしていき、やがて完成と思われる画面が(向きも含めて)決定されます。パネルは表裏両面貼り、裏面、側面にも地塗り、画面には直接アクリル絵具がのっていますが、下塗りと木目を潰す削りによるプレパレーションの後、部分、ベタ合わせて20層以上の描写としての塗りを重ねます。そして、水をかけながら耐水サンドペーパーで研削していきながら画面を造っていきます。この「塗り重ね→削りプロセス」は1タームであることが多いですが、場合によって画面をモニターしながら自分が納得いくまで、このタームを繰り返すこともあります。本作「1505」もそういう作品例です。画面側面はブラック仕上げ、裏面のスリットはパネル内の通気を兼ねたダクトですが、設置の際のピン、フック類も引っ掛けられます。画面は、削り出しているため平滑でふきんなどで拭き掃除もできます。絵画の特性の一つ、「重層的なマジック」を活かしきること。支持体上に絵具によってしか存在し得ない光景。制作を志した頃からの、私の欲求に沿ったやり方を1999年に見つけました。以来、「アクリル絵具の積層と研削」という一貫した技法・マチエールでペインティングの可能性を追求しています。