力強く、ひたむきな線の表情を携えるグラフィック「Scribble」。山のように積み上がる線は、写真に収めたボーダー柄のタオルの模様を3DCG上にコラージュする技法で構築されています。フリーハンドで描かずとも、ありふれた物の表情から想像を膨らませる試みが具体化されました。すでにある物からインスピレーションを分けてもらい紡ぐ物語は、今回力強さと勢いをもったスクリブル(殴り書き・走り書き)というモチーフとして立ち現れています。
衝突したり、滞ったりして歪みを含みながら線は走りつづけます。そうしていつの間にか堆積した線の山が、迷いながら何かに抗うようなエネルギーを静かに蓄えます。頂には小さく、人影も描かれました。たった一人で佇むその姿には、足元に強調された不器用さと、その上で冷静にとおくを見つめるまなざしが、バランスを保って共存する精神性として見立てられています。衆生の営みをテーマとしたLivng Thingsシリーズにおいて、ひとが持ちうる愚直さにこころを寄せる一枚です。
今回この絵柄を、キャンバスプリントという手法で製作しました。これはすでに釘打ちされた麻100%のキャンバス生地に、UVインクジェットプリントを施す方法でつくられます。プリントされたものである利点として、本体が約400グラムと軽量であることが挙げられます。その特性が、お部屋の壁にだるまピンなどの画鋲や釘で引っ掛けるだけですぐに飾ることができる手軽さを生んでいます。
なお、キャンバス裏面にはオープンエディション(限定部数を設けない作品)である旨の記載と、タイトル、製作年、直筆の作家サインが記されています。