本作はデジタル原画をジークレー印刷し、一部ハンドペイントを施した一点ものの作品です。目の上はアクリルガッシュで着彩し、角度によって煌めきを観測することができます。花を模した本シリーズは全4作品あり、それぞれ国花を表現しています。本作「Chrysanthemum-菊」は日本の国花である菊を表現しました。シリーズ1作目として制作した本作は、デジタルの時点ではJapanese Enyoというタイトルをつけていました。Enyoとはかつて満州を収めた愛新覚羅溥儀氏の正妻である「婉容」に由来します。映画「ラストエンペラー」の中で婉容が蘭の花を食べるシーンがありました。画としてミステリアスで美しい場面でしたが映画を観たのちにその意味を調べると、アヘンに蝕まれた婉容が満州の国花である蘭の花を食べることで、国家が滅びゆく様を暗喩しているとの考察に辿り着きました。私は痛く感動し、そのシーンをインスパイアして本作を描くことに決めました。描き始めたきっかけは上記の通りですが、花のシリーズを作成するうちに風刺的な意味合いは薄れ、ただ画としてお楽しみいただけることを目指した制作へと変化しました。ただ、本作がなければ続編の制作もあり得なかったので、社会的背景なくして本シリーズは生まれなかったとも言えます。