銅版画のメゾチントという技法で制作した作品です。わたしの制作のテーマである「人間の普遍的な情緒と現代という時代のギャップ」を表現しました。
美しいものを見て感動する、心をふるわせるといったことは誰しも経験してきたことだと思います。また、その経験こそわたしたちにとってとても重要なものであるはずです。しかし現代は、多くの人はあまりに慌ただしいテンポにのまれて毎日を送っています。美しく生きたい、そう願っていても、それが困難な時代でもあります。わたしたちの普遍的な情緒と、現代という時代にはギャップがあります。でも、それを悲観するのではなく、それに気づいたときが始まりなのではないでしょうか。
メゾチントは深い黒の色が特徴ですが、わたしの場合はそこにあえて白い部分をつくることで闇のなかの光をイメージしています。細部をよく見ていただくと、手仕事ならではのちょっとした手跡をご覧いただけるかと思います。版画を刷ってからアクリル絵の具で着彩を施してあるので、通常のモノクロームの版画作品とは一味ちがったものに仕上がっています。