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コレクター注目の完売アーティスト・蟷螂子が描く現代美人画の魅力

2023/11/07
TRiCERA ART TRiCERA ART

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キャンバスの向こうから、凛々しい眼差しをこちらへ注ぐ女性たちの作品。デビュー後わずか数年で国内外のコレクターから注目される存在になった蟷螂子は、「美人画の再構築」を目指すアーティストである。

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彼女たちの魅力は一体どのように生み出されているのか、そして蟷螂子が描き続ける「新しい美人画」とは何なのか。本記事では、TRiCERA ARTにて実施したインタビューで作家の制作に込められた想いに迫る。



コレクターの注目を集める完売アーティスト・蟷螂子


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蟷螂子

2021年より作家活動を開始。『美人画の再構築』に挑む現代アーティスト。


アーティスト活動開始からわずか2年で台湾・釜山など海外アートフェアに多数出展し、人気を博す。2023年8月には大丸・松坂屋が経営するギャラリーGINZA SIX Artglorieux Galleryにて、草間彌生らとともにグループ展に参加するなど、現代アート界からの期待も高い。

さらに、同月TRiCERAで実施した個展「Do girls dream of Electric City?」では出品作7点が全点完売。





アートの世界に足を踏み入れたきっかけ


ー蟷螂子さんは2021年春ごろから作品制作を始められたんですよね。まずはそのきっかけをお聞かせください。


元々、家族がイラストレーターとして活動しているんです。私自身は10年くらい普通の会社員を勤めた後に脱サラし、家族と事務所を立ち上げました。その時にロゴデザイン業務などを引き受けるようになり、徐々に自分も作品を描き始めたという経緯です。


ーデザイナーとしてのご経験は、今の作品制作にも繋がっていますか?


当時はデザイン技術も独学で学んだので、とにかくいいロゴをたくさん見てインプットするという訓練をしていました。その時の経験から、作家になってもいろんなものを見て作風に取り込んでいく、という姿勢は持ち続けています。

それから、デジタルで制作するときは最初からAdobeのIllustratorを開き、いきなりベクターライン(デジタルソフト上で、線の始点や終点、曲がり具合を設定して描く線)を描いていきます。鉛筆でラフを描いたりは特にせず、最初からほぼ完成に近い構図を作っていますね。

制作方法のためか、「線がシャープだ」という感想をいただくこともよくあります。これらもデザイナー経験が影響しているかもしれません。



蟷螂子の目指す「新しい美人画」とは


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ー蟷螂子さんのペンネームの由来を教えてください。


強い女性像を描いていきたいと活動当初から考えていたので、「カマキリのメスは交尾中にオスを喰らうことがある」という逸話にならって「蟷螂子」を名乗るようになりました。

ー活動初期から一貫して「強い女性」をメインモチーフに据えられていたのですね。女性を描こうと思ったきっかけは何ですか?


まず、私自身が日本で育つ中で、アイドルやアニメ文化に触れ、「女性が画面の中心にいる」ということに馴染みがあったから、という背景があります。

さらに、脱サラした後、テレビを何となく見ていると、毎日何かしらの事件に遭っている女性の写真が目について、やるせなさを感じてしまって。その頃から女性の外見的な部分だけではなく、内面の強さを描きたいと思って女性を描き始めました。

個人的にも、幼少期から「普通とは違う自分」を意識しながら生きてきたので、マイノリティや弱者が置かれる環境を目にすると色々と考えてしまう部分があります。それもあって、私が描く女性たちにも、女性であること、アジア人であることなど複数のアイデンティティーのレイヤーを持たせています。


ーコンセプトとして「美人画の再構築」を目指されていますが、蟷螂子さんにとっての新しい「美人画」とはどのようなものですか?


個人的に、観客側だけが「見る対象」ではなく、むしろ作品が観客に「こちらを見ている」と思わせるような美人画を描きたいと思って制作しています。

「再構築」の対象としては、女性やマイノリティに向けられがちなバイアスも含まれると考えていて。その上で、彼女/彼らが持つ生命力そのものを描いていきたいですね。

例えば、今年制作した「DARUMA」シリーズは、厳しい顔ですがユーモラスでもあるダルマに、人間の情けなさを託しています。そうした不完全な部分も引き受けて生きる女性を描き、人間自体の生命力の強さを表現しました。

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ー活動当初はデジタルで描いた絵をキャンバスに印刷したジークレー作品が多かったと思いますが、2023年ごろからハンドペインティングを取り入れていらっしゃいます。そのきっかけはなんですか?


作品を展示する中で、いろいろな方から「ハンドペイントにも挑戦してみたら?」と声をいただいたこともありますが、より直接的なきっかけはある作家さんと開いた二人展です。

私は当時デジタルプリントの作品を、もう一人の作家さんはハンドペイントの作品を展示していました。会期中、その作家さんの作品をじっくり見ると、「手で描くこと」で表現できる情報の多さを実感したんです。

もちろん、デジタルでもいろいろな表現は可能なんですが、手描きで塗り込まれた絵具は人間らしさというか、ある種の不完全さが魅力になっているんじゃないかと思って。実は、私は作家活動開始と同時期に子どもが産まれて、子どもを世話しつつ絵を描くという生活を送っているんです。その中で、上手くできないことも多いけれど、ニコニコ笑っている子どもと、手描きの魅力が重なって見えたのもあって、今年からはハンドペイントに移行しています。

ー制作方法を変えることで苦労した点はありましたか?


デジタルに比べて、手描き作品ではかなり線を整理しています。手描きで加わる質感などの情報は生かしつつ、よりシンプルなラインで作品が構成できるように、自分の中での造形方法はかなり変えました。

とはいえ、ハンドペイントで制作の幅は広がりましたし、むしろワクワクしている面が大きいですね。8月の個展では、デジタルイラストを印刷したキャンバスにライブペインティングで手描きの筆跡を加えるという試みもしましたし、今後試したいアイディアもたくさんあります。

Kamakiriko_Rcity

2023年年末〜年明けにかけての展示に向けて、新シリーズも結実させたいと思っています。

今後も「美人画の再構築」を目指し、様々な素材やモチーフを取り入れた精力的な活動を続けるという蟷螂子。直近では、2023年11月10日から上海にて「A-R-T in the Brain Hole 2023—Shanghai」に出品する予定だという。


また、TRiCERAでも年末〜年明けにかけての展示を準備中。進化し続ける蟷螂子の新しい「美人画」を目にする貴重な機会となる。




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著者

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現代アートの歴史・楽しみ方・各アートジャンルの解説など、役に立つ情報を芸術大学卒業のキュレーターが執筆しています。TRiCERA ARTは世界126カ国の現代アートを掲載しているマーケットプレイスです。トップページはこちら→https://www.tricera.net