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【SBIアートオークション】2023年9月予想落札額を越えた作家10名を紹介! KYNE・井田昌幸・ロッカクアヤコなど

2023/09/21
Tai Iguchi Tai Iguchi

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(出典:SBIアートオークション)

2023/9/15(金)・2023/9/16(土)に開催された第60回 SBIアートオークション|LIVE STREAM AUCTION
総落札額は198,633,750円、落札率は85.7%。
オンライン開催だったこともあり比較的価格は低めでしたが、水戸部七絵や井田幸昌ら、若手作家の活躍が目立つ結果となりました。



ceo
株式会社TRiCERA代表 井口泰

この記事では、現代アートEC・セカンダリー作品売買仲介サービスを展開する株式会社TRiCERAのCEOを務める私、井口が今後のアートマーケットを方向づけるSBIオークション落札結果について解説します。



今回の落札結果を5つの視点から解説


この記事では、今回の落札結果の中でも注目すべき作品を以下の5ポイントから解説します。

①予想落札額を大きく上回ったアーティスト

落札額TOP3のアーティスト(原画作品)

落札額TOP3のアーティスト(版画作品)

④TRiCERAでの取り扱いアーティスト

⑤セカンダリー市場デビューしたての注目アーティスト




①予想落札額を大きく上回ったアーティスト


まずは、予想落札額を大きく上回った実績落札額を記録したアーティストをご紹介します。

ニック・ウォーカー "The Morning After Brooklyn" 落札実績額:¥805,000

NickWalker
ニック・ウォーカー"The Morning After Brooklyn", 2016, 53.8 × 70.8 cm, スクリーンプリント, ED.500, LOT093.
Estimate ¥50,000 - 100,000

ニック・ウォーカー(Nick Walker, 1969-)はイギリス出身。
ストリートアートの先駆者で、スプレー缶とステンシルを組み合わせた作風を生み出し、バンクシーに影響を与えたとも言われています。

今回のオークションでは、予想最高落札額の8倍以上、¥805,000で落札されました。

2022年9月、アメリカ・ダラスで行われたオークションでは、同じく風景を描いた版画 "Santa Monica"が68,750 USD(約¥10,178,472相当)で落札されるなど、
同モチーフ作品の値上がりが注目されます。


水戸部七絵 "Jacqueline Lee Bouvier Kennedy" 落札実績額:¥747,500

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水戸部七絵 "Jacqueline Lee Bouvier Kennedy", 2022, 78.5 × 54.2 cm, アクリル, 紙, LOT0251.
Estimate ¥100,000 - 150,000

油絵具を手で掴み、厚塗りの肖像画を手がける水戸部七絵
2020年VOCA奨励賞を受賞し、2022年東京オペラシティで個展を手がけるほか、菅田将暉「ラストシーン」のCDジャケットカバーに採用されるなど、一般への認知度も高いアーティストです。
今回、SBIオークションへの出品は2回目。予想落札額の約5倍、¥747,500での落札となりました。
今後のセカンダリー市場での活躍が期待されます。

mitobenanae
(オークションデータより編集部作成、SBIオークションの結果のみ)


Ben Mori "Azure Dragon" 落札実績額:¥2,990,000

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Ben Mori "Azure Dragon", 2022, 40.0 × 180.0 cm, アクリル, スプレー, パネル, LOT0282.
Estimate ¥500,000 - 800,000



ファッションデザイナーとしても活躍するBen Mori
今回は自己最高落札額となる¥2,990,000で、最高落札額の4倍以上となりました。
オークション実績は4点で、いずれも予想落札額を上回っています
今後の値上がりと成長に期待が寄せられています。

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(オークションデータより編集部作成)


井田幸昌"Dior Lady Art 6 with Yukimasa Ida" 落札実績額:¥1,897,500

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井田幸昌, "Dior Lady Art 6 with Yukimasa Ida", 2022, バッグ, オリジナルケース, 33.0 × 25.0 × 12.5 cm, Lot 247.
Estimate ¥350,000 - 550,000


一期一会をテーマに作品制作を続ける井田幸昌は、すでに国際的に高い注目を集めるアーティスト。
2021年、サザビーズ香港に出品した油彩画 "King of Rock" (194 x 162cm)が、最高予想落札額の3倍以上である2,772,000 HKD (¥52,532,061相当)で落札されたことが話題になり、
それ以来セカンダリー市場でも快進撃を見せています。
2022年、Diorとのコラボで制作された本作も、最高予想落札額の約3倍、¥1,897,500での落札となりました。


②落札額TOP3のアーティスト(原画)


続いては、今回のオークションで予想落札額が最も高い日本人アーティストの作品をご紹介します。



1位 KYNE "Untitled" 落札実績額:¥13,225,000

kyne
KYNE "Untitled", 2020, 91.0 × 72.7 cm, アクリル, キャンヴァス, Lot 256.
Estimate ¥6,000,000 - 9,000,000

昨今の美人画ブームを牽引する存在、KYNE
今回のオークションでは¥6,000,000 - 9,000,000と最高落札予想額が付けられたこともあり、一番の目玉作品と目されてきました。
結果的に、¥13,225,000を記録。
2023年のKYNE原画の平均落札額である70,429USD(¥10,437,226相当)を若干上回る結果です。

なお、2022年のKYNE原画平均落札額は67,092.5 USD (¥9,938,815)のため、セカンダリー市場でのKYNE原画作品の価格は、昨年より上昇傾向。
今回の価格を踏まえると、2023年中により価格が伸びる可能性もあります。


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(オークションデータより編集部作成)


2位 アンディ・デンツラー "Woman in Burnt Sienna" 落札実績額:¥12,650,000

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アンディ・デンツラー "Woman in Burnt Sienna", 2022, 140.0 × 120.0 cm, 油彩, キャンヴァス, LOT 323.
Estimate ¥3,500,000 - 5,500,000

スイス出身の画家で、抽象表現主義とフォトリアリズムを組み合わせた画風のアンディ・デンツラー(Andy Denzler, 1965-)。
今回は最高予想落札額の2倍近く、¥12,650,000で落札されました。
この結果を受け、2023年のデンツラー作品(原画)の落札額中央値は¥6,905,469に。
前年度の落札額中央値¥3,716,046から¥3,000,000アップとなりました。

日本での取引実績の少なさから、国内マーケットでの更なる値上がりも見られるかもしれません。


3位 KYNE "Untitled" 落札実績額:¥3,910,000

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KYNE "Untitled", 2015, 41.0 × 24.0 cm, アクリル, パネル, Lot 257.
Estimate ¥1,800,000 - ¥2,800,000

今回のオークションで落札された原画作品のうち、落札実績額3位も1位と同様、KYNE
最高予想落札額を¥1,000,000ほど上回った結果となりました。

③落札額TOP3のアーティスト(版画)


セカンダリー市場での人気が高く、一点ものの原画入手が難しいアーティストは、版画作品の値段も高騰します。
そのため、版画部門での落札額の高さは、そのアーティストの需要の大きさを示す有力な指標の一つです。


そこでこの項目では、版画部門での落札額TOP3でアーティストをご紹介いたします。


1位 草間彌生 "FLOWERS A (Kusama 349)" 落札実績額:¥6,325,000

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草間彌生 "FLOWERS A (Kusama 349)", 2005, 51.0 × 61.0 cm, シルクスクリーン, ラメ, LOT 390.
Estimate ¥2,000,000 - 3,000,000

1998年以降より活発にオークションで取引されている草間彌生
今回も最高落札予想価格の約2倍、¥6,325,000という結果を残しました。
2023年の草間彌生の版画作品は平均¥3,929,457で落札されていますが、その中でもより高額の落札実績と言えます。


2位 草間彌生 "Mushrooms (Kusama 207)" 落札実績額:¥3,910,000

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草間彌生 "Mushrooms (Kusama 207)", 2005, 22.1 × 29.5 cm, シルクスクリーン, ラメ, LOT 390.
Estimate ¥1,800,000 - 2,800,000

版画部門の第2位もやはり草間彌生で、¥3,910,000を記録しました。


3位 ロッカクアヤコ "Untitled 1" 落札実績額:¥3,335,000

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ロッカクアヤコ "Untitled 1", 2020, 52.5 × 33.0 cm, 木版画,ED, 120 LOT, 330.
Estimate ¥1,200,000 - 1,800,000

カラフルな少女の作品で知られるロッカクアヤコは、2022年世界のアーティスト売上ランキングで78位を獲得するほど現代アートマーケットからの評価が高いアーティスト。
アダチ版画研究所とのコラボ作品である本作は¥3,335,000で落札されました。

同作品は他のオークションにも数回出品されており、2022年5月の落札実績額¥4,500,000が作品としての最高価格です。
今回の結果は、最高価格からはやや下降したものの、2022年12月の落札実績額である¥2,600,000よりはやや回復し、アートマーケットの復調傾向も窺えます。

なお、ロッカクアヤコの経歴やオークション実績に関しては下記記事でも詳しく解説しています。
ロッカクアヤコ作品の代表作や価格推移を知りたい方はぜひご覧ください。




④TRiCERAで取扱中のアーティスト


ここでは、現在TRiCERAのResaleで作品を扱っているアーティストの落札結果を取り上げます。

野澤梓"No Title" 実績落札額:¥184,000
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野澤梓 "No Title", 2021, 18.0 × 18.0 cm, アクリル, キャンバス, LOT, 230.
Estimate ¥50,000 - 100,000


あどけなさが残る少女の輪郭をいくつも重ねて描く作風が特徴的な野澤梓。
オークション出品は今回が4点目で、いずれも最高予想落札額を超えた結果を残しています。
2020年、2021年にアート台北に出品・即日販売を達成し、アジアでの人気も高いことから、今後の成長が期待されます。

TRiCERA Resaleでは、野澤梓の版画作品"portrait no.10_g/hand"を出品中。
「新進気鋭の作家を探している」という方は、ぜひ下記リンクから作品をご覧ください。



山口真人 "Stay with you *SQWH1" 落札実績額:¥1,069,500

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山口真人 "Stay with you *SQWH1", 2021, 80.3 × 80.3 cm, アクリル, キャンバス, LOT 276.
Estimate¥500,000 - 800,000

二次元派の画家として国際的知名度が高い山口真人
自撮りをする少女という彼のシグネチャーモデルで、今回は最高落札予想額を20万円ほど上回る¥1,069,500で落札されました。
2023年4月には同サイズの原画作品"TRUE / FALSE *TF2"の落札結果が¥885,000となり、やや上昇傾向が見られます。

TRiCERA Resaleでは、同じく少女をモチーフとしたシルクスクリーン作品を40万円台にて出品しております。



⑤セカンダリー市場デビューしたての注目アーティスト


ここでは、オークション実績がまだ数回程度ですが、予想落札額を超えた結果を出している注目の若手アーティストを紹介します。

大久保紗也 "Conductor" 実績落札額:¥414,000

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大久保紗也 "Conductor", 2021, 53.0 × 45.5 cm, 油彩、アクリル、キャンヴァスパネル, LOT 228.
Estimate¥150,000 - 250,000

1992年生まれの大久保紗也は、2017年に「第4回CAF賞」白石正美賞を受賞して注目を浴び、輪郭線と像のうねりとをキャンバスに共存させるアーティスト。

今回を含め、オークション実績は6回。
2023/1/28に最高落札額¥609,500を記録した後も落札予想額を上回る結果が続いています。
今回は最高落札予想額の約1.5倍、¥414,000での落札。前回、前々回の出品よりも価格が上がり、今後の価格の行方に注目が集まります。




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(オークションデータより編集部作成)


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ここまで、2023年9月のSBIアートオークション結果を解説してきました。
現在の日本現代アートシーンを牽引するKYNEが¥13,000,000超えという手堅い実績を見せたほか、予想落札価格の5倍超えを記録した水戸部七絵など、今後注目すべき若手アーティストも次々と登場した今回。

とはいえ、「どうしてこの高値で落札されたのか?」「これからどの作品が高くなりそうなのか?」と疑問に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。

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Tai Iguchi

著者

Tai Iguchi

株式会社TRiCERA代表、老舗音響機器メーカーやドイツ最大手医療機器メーカーでのキャリアを経て、ナイキへとジョイン、サプライチェーンや国際物流領域にて複数グローバルプロジェクトを手掛けたのち、2018年に株式会社TRiCERAを設立。