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アンリ・マティス|色彩の魔術師と呼ばれた画家を徹底解説!

2023/05/19
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アンリ・マティスは19世紀のフランスで活躍した画家・彫刻家です。
奔放な色彩と、ピカソなどの革命からさらに進んだ「フォーヴィスム」(野獣派)という芸術運動の代表的な画家と言われています。
アンディ・ウォーホルなどの後世の芸術家にも絶大な影響を残しており、現代の存命アーティストにもインスピレーションを与え続ける偉大な画家です。

マティス作品の特徴

「切り絵」を使用した作品群

マティスは、晩年に色紙を切り貼りした切り絵作品をたくさん残しています。
油絵や水彩など絵の具を使って多くの絵を残したマティスですが、色紙を用いることで、「極限まで純化された色彩と形」を追求することができました。
「切り絵では、色彩の中でデッサンをすることができる」という言葉を残しているマティスは、「絵の具を塗る」という作業を飛ばして色彩の中で考えることを重視しました。

マティスの色彩感覚

自然をこよなく愛したマティス絵画の最大の特徴は、その豊かな色彩世界にあります。
ピカソがキュビズムによって、美術史の中で形態(フォルム)を現実から解放する革命を起こしたとすれば、マティスは色彩を現実から解放した革命家でした。
鮮やかで単純な色彩を追い求めることで、ピュアな世界観を作り出しました。


マティスの生涯

幼少期のマティス

マティスは、1869年、フランス北部の町ル・カトー=カンブレジの裕福な穀物商人の家に生まれます。
18歳の時、法学を学ぶためにパリに行き、資格を取得した後は故郷に戻って法廷行政官として働きました。
20歳の時、虫垂炎にかかってしまったマティスは、入院中に母親が持ってきた絵画作品を見て大きく心を動かされたことから、結果的に絵画を始めました。彼は後にそれを「一種の楽園」と表現し、芸術家になることを決意しましたが、彼の父親はこれに失望してしまいました。

美術学校時代

1891年に再びパリに戻り、アカデミー・ジュリアンでウィリアム=アドルフ・ブグローと、国立美術学校でギュスターヴ・モローに師事し、本格的に美術を学び始めます。
最初は静物画や風景画を伝統的なスタイルで描いており、いわゆる上手な絵を描く技術はついていきました。
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ギュスターヴ・モローのスタジオでのデッサン、1894 - 95年

マティスはシャルダンやプッサン、アントワーヌ・ワトーなどのオールドマスターや、マネなどの同時代の画家、そして日本美術にも影響を受けました。
特に静物画で有名なシャルダンはマティスが最も尊敬する画家の一人であり、芸術学生時代にルーヴル美術館で彼の作品の模写をしたこともわかっています。のちに色彩の画家として誰も見たことのない絵画を展開したマティスですが、そのモチーフは室内画や静物画が多く、そこにシャルダンの影響が見て取れます。

ヴァン・ゴッホの絵画の衝撃

1896年、27歳のマティスは、ブルターニュ沖のベル=イル島という場所にオーストラリアの画家ジョン・ラッセルを訪ねました。
ラッセルを通して印象派の絵画やゴッホの作品を知り、さらにゴッホのドローイングの一つを受け取ったマティスは、それまでの伝統的な絵画のスタイルを完全に打ち捨ててゴッホの色彩の魅力に取り憑かれました。
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《ピンク色の壁》1898年

マティスはこの地でラッセルから色彩理論を学び、画家として大きな転換を経ることになります。
同じ年、フランス国内の国立美術協会が主催するサロン(官展)で5点の作品を展示しそのうち2点が国に購入されることになり、急速な評価を絵始めます。

セザンヌ、ターナー、シニャックの影響

1898年、印象派グループの父親的存在だったカミーユ・ピサロの助言を受けて、18 - 19世紀に活躍したイギリスの画家ターナーの絵画を研究しにロンドンへ渡ります。
翌年パリに戻った彼は、同年代の画家、アンドレ・ドラン、ジャン・プイ、ジュール・フランドランなどと親交を深めます。
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《テーブルの上の食器》1900年、エルミタージュ美術館所蔵

マティスは制作だけでなく、尊敬する画家の作品を買うことにも没頭していたため、借金を重ねていました。彼の家には、ロダンの石膏の胸像、ゴーギャンの絵画、ヴァン・ゴッホのドローイング、セザンヌの『三人の入浴者』などがありました。
特にセザンヌの画面構成や色彩感覚に共感を覚えたマティスは、セザンヌが孤独に進めた美術の革命を引き継ぐことになります。
また、30代にさしかかったこの時期、点描技法で有名なポール・シニャックから筆触分割(細かなタッチごとに鮮やかな絵の具を置くことで、離れてみると隣同士の色が混ざって見えるような技法)を学びました。この頃のマティスは分割技法を駆使した絵画を多く制作しています。
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《ヌードの習作》1899年


フォーヴィスム(野獣派)の始動

ドランとのフォーヴィズムの創始

1900年頃から、マティスは友人のアンドレ・ドランと共にフォーヴィスムと呼ばれる芸術運動を始めます。この運動には、他にもルオーやヴラマンク、デュフィなども参加していました。
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《帽子を被った女性》1905年、サンフランシスコ近代美術館所蔵

しかし、1908年までに3回ほど展覧会を開いたものの、評判は芳しくありませんでした。
フォーヴィスム(野獣派)という独特な名前の由来は、1905年にサロン・ドートンヌの一室で開催された展覧会をみた美術批評家のヴォークセルが「野獣の檻のようだ」と揶揄したことです。
この少し前に、印象派が出てきた際にも批評家に「絵画の印象しか描いていない」とネガティブに批評された表現をもとに定着した「印象派」という名称のつけられ方と非常に似ています。

(実は、17世紀にまで遡ると、「バロック美術」という名称もあります。これも同様に、バロックとは「歪んだ真珠」を意味しており、元々はルネサンス様式の紛い物だとして批判的に使われていた名称でした。それが使い続けれられるうちに馴染んで美術史上の位置を獲得するという現象は、西洋美術の歴史の中ではたびたび見られます。)
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《コリウールの屋根》1905年、エルミタージュ美術館所蔵

逆境にもめげずに制作を続ける

フォーヴィスムとしての展覧会は失敗続きでしたが、のちにマティスの代表作とみなされるような重要な作品はほとんどが1906年から1917年の間に描かれており、彼の創作意欲は溢れていたことが伺えます。
また、フランス国内の美術の研究だけではなく、アフリカを訪れてアフリカ美術やプリミティヴィズム(原始美術)も研究するなど、貪欲な美術研究を行いながら新たな要素を取り入れ続けました。
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マティスの代表作の一つ、《マティス夫人の肖像(緑色の線)》1905年、コペンハーゲン国立美術館所蔵


マティスの最も有名な作品と言える《ダンス》1909年、ニューヨーク近代美術館(MoMA)所蔵

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彫刻作品も意欲的に作っていた。《フィギュール・デコラティヴ》1908年


人生の友ピカソとの出会い

ピカソとの邂逅

1906年、マティスは11歳年下のパブロ・ピカソと出会いました。
二人はのちに生涯続く友情を結び、さらに競争相手でもありました。美術史においても最も重要と言って良い二人は、しばしば比較されます。
ピカソとマティスの大きな違いは、マティスが自然から描いたのに対して、ピカソは想像から描くことが多かったという点にあります。
テーマとしては女性と静物がどちらの場合も多く描かれ、マティスは人物をしっかりと輪郭線を描いた室内において描くスタイルをとりました。
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《モロッコ人》1915 - 16年、ニューヨーク近代美術館(MoMA)所蔵

ギヨーム・アポリネールら詩人との交流

マティスがピカソと出会ったのは、有力なブルジョワであったガートールド・スタインが主催していたサロンでした。ここには数多くの芸術家が集まり、画家、詩人、彫刻家などが交流しました。そこには詩人のギヨーム・アポリネールやマリー・ローランサン、アンリ・ルソーなどもいました。
マティスは1912年から16年までをモロッコで過ごし、多くのタブローとドローイングを制作しました。オダリスクや、金魚の飼育箱といったモチーフは、このモロッコ旅行の後から見られるようになります。

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《青い窓》1913年、ニューヨーク近代美術館(MoMA)所蔵


晩年の切り絵

1941年、マティスは腹部癌と診断され、手術を受けました。
手術の結果、車椅子生活になり、頻繁にベッドに寝たきりの状態になってしまいます。これまでの油彩画や彫刻という表現は身体的に難しくなったため、彼は新しいタイプの表現手段を模索せざるを得なくなったのでした。
そんな中で出会ったのが色紙を使った切り絵です。
彼は助手が事前にグワッシュで絵付けした紙を色とサイズの異なる形に切り、それらを組み合わせていきいきとした構図を形作りました。
最初は小さな作品でしたが、やがて壁画や部屋全体の作品に発展しました。その結果、独特で立体的な複雑さが生まれ、絵画でも彫刻でもない新しいの芸術の形態が生まれました。切り絵は、マティスの象徴的な表現手段になりました。
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現代アートの歴史・楽しみ方・各アートジャンルの解説など、役に立つ情報を芸術大学卒業のキュレーターが執筆しています。TRiCERA ARTは世界126カ国の現代アートを掲載しているマーケットプレイスです。トップページはこちら→https://www.tricera.net