世界で盛り上がりを見せているアート市場の動き。
特にアジアでは2023年にアート気運が高まっているとも言われています。
サザビーズやクリティーズをはじめとした大手オークション会社のアジア本社がオープンし、「M+」などアジア有数のアート施設も開設された香港をはじめとして、様々な人物が拠点にするアジアのコレクターをご紹介します。
アリババ創業者、「ジャック・マー」
中国の実業家ジャック・マーの経歴は、まさに21世紀の寵児と呼ぶにふさわしいものです。
彼はアリババの創立者であり、株式公開額は250億ドル以上の中国最大手のEコマースサイトを生み出しました。
中国本土の起業家として初めて『フォーブス』の表紙を飾り、同誌は2014年、彼を世界で最も力のある人物ランキング30位に選出しました。
彼はまた、アートコレクターであり、さらには画家のような存在でもあります。
2015年秋、マー氏が初めて公開した作品「Paradise」は、中国人アーティストZeng Fanzhiの協力を得て、丸いキャンバスに油絵で描いた地球の肖像画で、サザビーズのオークションで540万ドルという破格の値段で落札されました。
落札したのは、中国の実業家、銭風雷(チアン・フェンレイ)氏。マーはオークションのカタログに「私が絵を描いたのはこれが初めてです」と書いています。アーティストとしてのキャリアのスタートとしては破格のものだと言えるでしょう。
BTSのリーダー「RM」
今最も世界で注目を集めている男性Kpopグループと言っても良い「BTS」のリーダーを務めるRM(本名キム・ナジュン)は、実は数年前からアートコレクターとしての顔も持ち始めました。
BTSのYouTubeチャンネルの登録者は7,000万人以上、RMの個人インスタグラムのフォロワー数は3700万人にのぼります。
RMがアートに目覚めたきっかけ
ソウル近郊で育った彼は、両親に「美術館に連れて行ってもらったけれども、それほど楽しかった記憶はありません」と言います。
しかし、2018年のコンサートツアー中、ホテルの部屋に座って休憩時間に何をしようか考えていたRMは、思い切ってシカゴ美術館に行くことにします。
そこで目にしたスーラとモネの絵画が彼の心を捉えました。
「スタンダール症候群にかかったかのようでした」とRMは語ります。
スタンダール症候群とは、アートの鑑賞者が、ふらつきや心拍数の上昇といった身体的な症状を呈する疾患のことです。複製品でしか見たことのない作品を実際に見たときの衝撃は大きかったのでしょう。
RMのコレクションするアーティスト
KAWSの大きな立体作品もコレクションする中、彼は意識的に韓国のアーティストの作品を多く買っています。そこには、パク・スグン、チャン・ウッチン、ナム・ジュン・パイクといった、20世紀を代表する韓国人アーティストの作品も含まれます。とくに朝鮮戦争や軍事独裁政権下、経済不安の時代を生き抜いた世代のものに共感を感じ、集中してコレクションしているとも語っています。
左はユン・ヒョンクンの作品。右は李氏朝鮮時代の書家、キム・ジョンヒの作品
元タクシー・ドライバーとして有名な「劉益謙&王薇」夫妻
劉益謙は、元タクシードライバーという経歴を持ちながらも一代で莫大な富を築き、さらにはアートオークションなどのイベントで派手なパフォーマンスを見せつけることで有名なコレクターです。
龍美術館に様々な芸術作品を収集
劉と王がオークションに参加し始めた1990年代初頭、中国のアート市場は生まれたばかりでした。
二人は趣味で始めた美術品の収集にのめり込みました。
多くの人にとって劉は、タクシーの運転手から大富豪に転身した「成金」かもしれませんが、サザビーズのオークションで明王朝時代の小さ磁器「鶏缸杯」を3630万ドル(約45億円)で落札し、それを実際に使っている写真がネットで広まると、ちょっとした騒ぎとなりました。
王は、夫妻が上海に開設した「龍美術館」(ロン・ミュージアム)の立役者であり、責任者を務めています。20年以上に渡り、夫妻は主に中国の古典と現代の美術作品を膨大に収集し、そのほとんどを同美術館で展示しています。
彼らが目指すのは、龍美術館をニューヨークの現代美術館やグッゲンハイム美術館と肩を並べるような世界一流の美術館にすることだと語ります。
西洋画のコレクションまで
それまでは中国国内の古代の美術品や現代アーティストの作品をコレクションしていましたが、2015年にはアメデオ・モディリアーニの裸婦像を購入し、その額は1億7040万ドル(約210億円、手数料を含む)だったと言われています。
中国の芸術のみならず、世界の芸術品を収集し、本当にMoMAやグッゲンハイム美術館と並ぶコレクションを築けるかもしれません。
台湾の有名なコレクター「ピエール・チェン」
台湾の中でも指折りの富豪であるピエール・チェンは、1977年に設立した電子機器大手のヤゲオ・コーポレーションで財を成しました。『サザビーズ・マガジン』の2014年のプロフィールによると、彼は前年の1976年、まだ学生だった時に、最初の購入品として香港在住のアーティスト、チャン・イーの木製彫刻(価格25,000台湾ドル)を買うための資金を、1年半かけて貯めたと言われています。
彼が長年にわたって購入してきた作品は、トーマス・シュトルートやゲルハルト・リヒターの作品から蔡國強の作品まで多岐にわたります。また、美術新聞によると、彼はピカソの作品7点、フランシス・ベーコンの作品2点、ゲルハルト・リヒターの作品10点を所有しているといわれています。
チェンが語る、アートの必要性
2019年、チェンは自身の財団が所有するコレクションを公開するためのアート施設の構想をメディアに語りました。さらに、芸術家を支援するプログラムにも関心を示しています。
しかし、これらはまだ実現には至っておらず、まだ自身での楽しみ方をコレクションに見出しているのかもしれません。
「私のビジネスは非常に速く変化します。「常に新しい技術が市場に出てくるので、毎日が戦いです。人生のバランスをとるためには、アートと音楽が必要なんです」。
アートの必要性に関して、チェンはこのように語ります。
チェンのお気に入りの作品とは
コレクションの中でお気に入りの作品を選ぶよう求められたチェンは、ARTnewsに対し、最上位に位置するのはサイ・トゥオンブリーの『無題(ローマ)』(1971年)と、フランシス・ベーコンの『ルシアン・フロイドの肖像のための3つの習作』(1965年)の2点だと語りました。
2015年5月、ニューヨークのクリスティーズで、チェンはピーター・ドイグの絵画『Swamped』(1990年)に2600万ドルを投じ、同作家のオークション新記録を樹立しました。
ピーター・ドイグ《Swamped》1990年
ワイン投資にも積極的
美術品だけでなく、30年以上にわたって、チェンは重要なワインコレクションも蓄積してきました。2021年、サザビーズはこのワインコレクションを香港の専用オークションで落札し、チェンは1140万ドルを手にしました。
これは、アジアで開催されたシングルオーナーワインセールとしては2番目に大きなものでした。
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