アート産業の市場規模をご存知でしょうか。2023年4月に発表された市場調査では、2022年の世界のアート市場全体は678億USドル(約9.2兆円)と発表され*、この数値は2019年のコロナ禍前の水準を上回る結果となりました。アートの二大オークションであるサザビーズとクリスティーズでの売上高も過去最高額を記録するなど、アジアも含めて世界中で盛り上がりを見せています。
そんなアート産業は、上位の4カ国で市場シェアの約87%を占めているのが現状です。世界の上位国と日本を比べてみてみると、そこには日本市場がまだまだ成長するためのキーワードが隠れております。
今回はビジネスの視点で見たアート業界の実態をご紹介していきます。
*The Art Basel and UBS Global Art Market Report より
世界と日本のアート市場を比較:上位4ヵ国で市場シェアの87%を占める
世界のアート市場規模と国別シェア
2023年にアート・バーゼルとUBSから発表された大規模調査レポートによれば、2022年の世界全体のアート市場規模は678億USドル(約9.2兆円)。過去10年間でみると、5年毎に約10%成長しています。
国別の市場シェアは、トップの座を維持したアメリカ合衆国で45%、前年比2%増の結果となりました。2位はイギリスで18%と中国を抜き、3位は中国17%、4位を維持したフランスで7%となっています。この上位4カ国で、マーケットの87%を占めています。これらの国に対して、日本のアート市場シェアは現在1%となっています。
アートは一見すると豊かな国で盛り上がるイメージがあるかも知れません。しかし日本は世界と比べGDPが特別低いことはなく、富裕層の多い国でもありますが、なぜ世界と比べてまだこれだけの差があるのでしょうか。
*ちなみに2021年版の報告によると、アートコレクターの52%がミレニアル世代(1981 - 1996年生まれ)、35%がジェネレーションX(1965 - 1980年生まれ)であり、この二つの世代が最も活発なアート購入活動を行っているというデータがあり、比較的若い層が半数を占めているという傾向も見られます。このミレニアル世代のコレクターは日本には少なそうですが…
上位国の市場ではオークション(二次流通)が盛んである
世界トップのシェアを誇るアメリカでは、2022年の統計では302億USドルを記録。アメリカは世界二大オークションハウスであるサザビーズとクリスティーズを擁しており、ニューヨークのオークション市場は世界でダントツの売り上げを記録しています。
イギリスは、EUの27カ国をすべて合計したよりもはるかに多い売上を生み出しています。イギリスにおいても、その市場のうちのほとんどは有名オークションハウスが開催する二次流通市場の活発性に支えられていると言えます。
中国は2022年、総売り上げが前年比14%の下落となりましたが、2023年の中国および香港の市場には注目が集まっています。こちらでも、クリスティーズ・サザビーズ・フィリップスなどの世界最大のオークションハウスが次々に支社を建てており、世界に誇るアートコレクターも中国・香港から誕生しております。
日本のアート市場が世界と比べて未発展の理由
アート産業は「一次流通(プライマリー)市場」と「二次流通(セカンダリー)市場」に分かれる
先の章では世界のアート市場の全体像を俯瞰してみました。おおよその雰囲気が掴めたら、世界と日本の比較に入りましょう。
先ほどの2023年のレポートによれば、日本のアート市場シェアは世界で1%。一位のアメリカの足元にも及ばず、ヨーロッパ主要諸国にも先を許しています。
一体なぜ日本のアート市場はこれほど伸び悩んでいるのでしょうか。
その原因を知るには、「一次流通(プライマリー)市場」と「二次流通(セカンダリー)市場」に分かれているアート市場の構造を知る必要があります。
一次流通市場とは「作品が最初に世に出る市場、作家→コレクターへ渡る」ことを指します。対して、二次流通市場とは「一次流通で購入・所有していた作品を、オークションなどでリセールする市場、コレクター→コレクター」のことを指します。すべてが"一点もの"、そして需要が供給を上回る現象が起こりやすいアート市場の特徴が、この二層構造に反映されています。
「二次流通(セカンダリー)市場」の重要性
一見すると一次流通市場がまさにアートの売り場という感じを受けますが、実は二次流通市場の動向は一次流通よりも注視され、市場全体の鍵を握っているとも言えます。
例えば、世界の市場シェア45%を誇るアメリカでは、その中で二次流通での取引が50%を占めています。先ほど述べたように、その他の上位国でも二次流通での取引は活発に行われています。
アーティストは作品制作に時間を要するため、当然人気作家になるほど、作品が欲しいお客さんが常に並んでいる状態になります。そのような中、現所有者に対し、付加価値をのせて購入を申し込む二次流通市場があることでアート市場全体の流動性、活発性が保たれます。さらに、二次流通で作品の価値が向上し、知名度が上がることがアーティストにとっても大きな意味を成します。二次流通がコレクターとアーティストの活動両方を盛り上げる要となります。
日本のアート市場は、二次流通市場が占める取引額は決して大きくありません。二次流通市場が成熟している欧米・中国と比較すると、日本のコレクターは「購入した作品を所有し続けることが多い」、「オークションそのものに敷居の高さを感じている」、「そもそもアートコレクターが少ない」などの現状課題が考えられます。そして、このことが日本アーティストのキャリア成長を妨げている要因とも考えられます。アーティストのキャリア成長において、世界に進出するためには「二次流通市場で作品が売買され資産的価値がつく」ことは必須です。本来二次流通市場で評価されるべきアーティストの作品の流通を活発化させることがアート市場には求められます。
日本の二次流通を支える既存のオークションハウス
日本で有名なオークションハウスを2つご紹介します。
まずは、日本の代表的なオークションハウス「SBIオークション」。SBIオークションは2011年に設立された、現代アートに特化したアートオークションです。日本の若手人気アーティストの二次流通作品はSBIで取引されていることが多いでしょう。こちらは年に4~5回ほどの定期オークションのほか、オンライン限定イベントなども開催しています。
また、「シンワオークション」も有名です。日本初の本格的なオークション会社と言われており、その前身は1989年に設立された「新和会」という美術品業者交換会です。こちらは、現代アートを取り扱いつつも、同時に戦後美術や工芸品、ワインやマンガなど幅広い品を取り扱っています。中には落札予想価格2万円という値段からスタートする取引もあり、非常に入りやすいオークションとなっていると言えます。
日本のアート市場を盛り上げるために
市場の流動性を高め、市場を活性化させる
市場の活性化においても、アーティストのキャリア成長においても、二次流通市場が持つ役割を理解し、より身近な存在にすることが必要なのかも知れません。
トライセラのリセール機能について
TRiCERA ARTでは世界126ヵ国から集まった現代アート作品を掲載しています。先ほどの一次流通・二次流通でいえば、作品が最初に世に出る一次流通の役割を担っています。
そして2023年4月より新機能「リセール機能」を開始し、二次流通としての働きも始めました。(アート作品を所有しているコレクターが、所有作品をTRiCERA ARTのオンラインギャラリー上で販売できる機能)
所有アート作品を無料査定依頼する
TRiCERA ARTのリセール機能は、検品や梱包など出品にまつわる面倒な作業を代行するので、簡単に作品の出品が可能です。TRiCERA公式LINEを通じて無料査定も行っており、売却を検討中の方も気軽に所有アート作品の市場価格が分かります。作品情報をご提供いただき、そちらを元に予想落札価格を査定させていただきます。
TRiCERA公式LINEにて随時受付しておりますので、お気軽にご相談ください。
TRiCERA ARTの二次流通「リセール機能」に関するプレスリリースはこちら:
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000066.000043089.html
「アートは鑑賞されることで命が宿る」
これまで、「一次流通はギャラリー、二次流通はオークション」と分断されていたアート市場の構造改革を目指すTRiCERA ARTの新機能。アジア最大級のアートマーケットプレイスであるTRiCERA だからこそできる、アート作品の新しい流通方法です。
アート作品を所有しているコレクターの中には、嗜好の変化や所有作品の増加、スペースの限界により「作品の保管に困っている・ずっと倉庫に眠らせている・処分に困っている」という現状もあります。TRiCERAのリセール機能を通じて、多くの作品が新しいコレクターの元へ行き、アート市場の発展につながることを願います。