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  • CURATOR’s EYE

現代アートが面白い!観る者を引き込む独自の表現をする作家たち

2023/04/12
TRiCERA ART TRiCERA ART

皆さんは「現代アート」と聞いてどんなイメージを思い浮かべるでしょうか?

奇抜なオブジェや、感性豊かな色彩で彩られた美しくもポップ調な絵の数々、中には自分でも作る事ができるのではないかなどど感じてしまう様な、非常にシンプルな作品など。

現代アートは、常に世界の様々な秩序に対して表現、挑戦を続けています。図工の問題や、写真、絵画、彫刻などの領域を超えて、アーティストたちは作品を通して表現をし、現代社会へ何かを訴えています。失業者が増えたり、治安の悪化や格差社会への反発などに対して、何かを表現したいアーティストたちのカタチとなったものが現代アートなのかもしれません。

今回は一風変わった現代アート、面白いアーティストたちの作品をいくつかご紹介しましょう。


これを知れば面白い!魅力的な現代アーティストと代表作

マルセル・デュシャン


代表作:《泉》(1917年)
「現代アートの父」とも呼ばれる、マルセル・デュシャン。
彼が1917年に発表した作品《泉》は、ひっくり返した男性小便器に「R. Mutt」とサインされただけのものでした。
この作品は、美術館に収蔵されたのち、2002年には個人により2億2千万円(1億8500万USドル)で売却されました。
当時から、「こんなものは美術作品ではない!」「なんでこんなものにそんな高値がつくのだろうか?」と言われてきました。
しかし、その疑問こそまさにデュシャンが狙って引き起こしたものなのです。
デュシャン以前は、印象派やキュビズムなど、古典的美術からすれば革新的な仕事をした芸術家たちも、あくまで「目で見て面白い」作品を作り出してきました。
しかし、デュシャンはそのような作品を「網膜的絵画」と呼んで批判し、自身の作品は「頭で考えて楽しむ」作品であると主張しました。
確かに、ただサインされただけの小便器は、それが美しくなく、むしろ積極的に見たいものではないからこそ、そのような物体を美術館に展示してしまうこと=パッケージすることこそが「芸術」を作り出しているのだと考えられます。
(ちなみに、サインされた名前の「R. Mutt」は、Mott Worksというアメリカの衛生用品メーカーをもじった創作された名前です。すなわち、非常に即興的に遊びとしてつけられたものでした)
「モノ」にこだわるのではなく、「考え方」や「捉え方」の独自性に価値をおき、見る者の価値観をどれくらいひっくり返せるかという点に着目したところがデュシャンのすごいところだと言えます。


クリスト&ジャンヌ=クロード


代表作:《包まれたドイツ国会議事堂》(1971〜1995年)
クリスト&ジャンヌ=クロードは、夫妻で活躍した現代アーティストです。
夫のクリストはブルガリア生まれで、首都ソフィアの美術学校とウィーン美術アカデミーで学んだ後、58年パリに移住し、初期は肖像画と缶や工業製品などを布で梱包する作品を手がけました。
ジャンヌ=クロードはモロッコで生まれ、チュニス大学でラテン語と哲学を専攻。パリでクリストと出会い、二人で公共空間での作品発表を始めます。
二人は膨大な時間と労力をかけ、公共の建築などを大規模な布で包み込んで覆い隠してしまうプロジェクトを行いました。
この作品では、ドイツの首都ベルリンの国会議事等を完全に布で包んでしまっています。
2週間ほどの会期中には、およそ500万人の観客が世界中から集まり、ドイツの文化史に残る規模のイベントとなりました。
このプロジェクトを実現させるまでに、クリスト&ジャンヌ=クロード夫妻は実に23年もの時間と、700ページに及ぶ申請書を作り上げたと言われています。
なぜ、そのような膨大な時間と労力をかけてまでこのようなことをしたのでしょうか?
彼らは、一つの雨粒のように儚く消えるものだけを、芸術として認めました。
彼らのプロジェクトは、莫大なエネルギーと資金を消費して実現されますが、それは2週間ほどの会期を終えると速やかに解体され材料は破棄もしくは分配されます。
一瞬の夢のような現象。
その一回性を大きな要素とした限りない美しさを史上稀に見る規模で実現した点で、この夫妻の独自性と革新性が認められます。


オラファー・エリアソン


代表作:《The weather project》(2003年)
オラファー・エリアソンは、デンマーク出身のアイスランド系の現代アーティストです。
彫刻と、光・水・気温といった自然の要素を使い、鑑賞者にサイトスペシフィックな「自然の」体験をさせる大規模なインスタレーションで知られています。
1995年、空間認知の研究所であるスタジオ・オラファー・エリアソンをベルリンに設立しました。
2003年にロンドンのテート・モダンで"Weather Project"という展示を成功させ、同年にはヴェネツィア・ビエンナーレでデンマーク代表となり評価を高めました。
現在、世界で最も影響力のあるアーティストの一人です。
この作品は、まるで太陽のような温度の色の光源を美術館内に再現し、人々が眺め、語り合う場を作り出しました。
彼の作品は、一見とてもシンプルな現象を扱っています。
しかし、実際には、自然を経験することや、媒介すること、表象することを哲学的に考えさせるような深度のある作品になっています。


フェリックス・ゴンザレス=トレス


代表作:《Untitled (Perfect Lovers) 》(1987 - 90年)
同性愛者、またキューバ出身という出自でマイノリティの生を生きたフェリックス・ゴンザレス=トレスは、この作品においてエイズで亡くした恋人と自分がそれぞれを生きている二つの時間を、二つの時計に託しました。
日常的なモチーフを使用して作られる彼の作品は、他には例えばキャンディーを大量に部屋の隅に集めたものなどにも見られます。
非常に洗練され、クリーンな表現に落とし込まれた彼の作品は、見る者にミニマルな印象を与えます。
愛、死、同性愛、寛容さ、時間などの観念を考え直すきっかけを与えてくれる彼の作品は、特定の時代に縛られずにいつでも私たちの感覚を刺激する事でしょう。


杉本博司


代表作:《海景》シリーズ(1980年〜)|《北極海、ノールカップII》(1989年)
杉本は、一貫して個人の存在を超えた時間の積み重なりや流れをとらえるためのコンセプトや方法を模索しています。
また、60年代のコンセプチュアル・アートの影響を大きく受けており、デュシャンの《大ガラス》という作品もリスペクトのもと再制作に関わっています。
この《海景》シリーズは、「人間の見ることのできる共通・普遍の風景を模索した結果、海の水平線へと至り、世界各地の海や湖で同じ風景を撮影してくる」というコンセプトのもとに作られました。

「人類が最初に見た風景は海ではなかっただろうか」

「海を最初に見た人間はどのように感じたか」

「古代人の見た風景を現代人が同じように見ることは可能か」

といった発想に基づいて、厳密に同一な手法で撮影された様々な場所の海は、人間が付与した特定の場所性というアイデンティティを剥奪されます。
杉本が写す「真の」写真は、他の写真家とは一味違った哲学的な深みを持っていると言えるでしょう。



TRiCERAおすすめ作家を紹介

iiisu


IIISU 2022.09,11
『IIISU』は「人生を共にする作品」へと生まれ変わらせたパイプイスの総称でありチームの屋号。
このプロジェクトのはじまりは、パイプイスが入学式や卒業式、さまざまな思い出に残るシーンに存在しているにも関わらず、雑に扱われ、壊れてしまえば捨てられてしまう現状に感じられる不満でした。
「物に宿る記憶、想い」までもが一緒に捨てられていることを、変えたい。そのような思いのもと制作されています。
役目を終えたパイプイスを「かっこいい」「かわいい」「座り心地のいい」IIISU(イイイス)へと生まれ変わらせることで、愛情をもって大切に使ってもらえる存在になり、価値観を見つめなおすきっかけを生む事を目的として製作しています。

masami ohno


Gold Dragon
W 30.00cm x H 26.00cm|¥60,000
金龍は中国の神話に登場する神獣の1つ。
中心的な役割やその色を象徴することからリーダーシップの発揮や金を生む縁起物とされています。
自然光や照明で缶の光り方も変容し、作品をより楽しむ事ができます。
額縁も古材を使用し作品のイメージに合わせた仕上がりとなっています。

M. Febriandy


CamouFler
W 35.00cm x H 45.00cm|¥198,000
この絵は、ある詩から着想を得て制作されています。
虚しさを楽しみ、感情を排出し、ほとんど盲目の絶望に溺れて忙しいカモフラージュの表現。
カモフラージュとは、生き残るための手段であり、外見、態度、色、感情を外と内の間で偽装することでそれが描かれます。
絵と文の融合物とも言えるでしょう。



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現代アートの歴史・楽しみ方・各アートジャンルの解説など、役に立つ情報を芸術大学卒業のキュレーターが執筆しています。TRiCERA ARTは世界126カ国の現代アートを掲載しているマーケットプレイスです。トップページはこちら→https://www.tricera.net