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現代アートは難しい。一体誰が、どんなふうに評価されている世界なのだろう?現代アートを知ろうと思ったことがある方は、そんなふうに戸惑った経験がある方も多いでしょう。「現代アートを理解するための100人」シリーズを読んで、アートワールドの国内・国外の主要なプレイヤーを網羅していきましょう。
ジェフ・クーンズは、キッチュなイメージを使った絵画や彫刻作品で知られています。最も有名なのは、バルーンアートを陶器の彫刻にしたものです。他にも、《マイケル・ジャクソン・アンド・バブルス》などキッチュさを全面的に押し出した作品制作で知られています。彼がアート界で活躍し始めたのは80年代ですが、当時の現代美術シーンはミニマリズムなど切り詰められた表現が主流でした。その中で、ウォーホルの活動を彷彿とさせるようなファクトリー形式で工場のごとく大量生産・広告や商業自体をテーマとした作品は、一部のコレクター・批評家には絶賛され、他のものからは厳しい非難が浴びせられてきました。オークションの世界でもしばしば歴史に残る高額をつけられることで有名で、2007年11月14日、サザビーズのオークションで、クーンズの『ハンギング・ハート(Hanging Heart)』という作品が2360万ドルで競り落とされました。これは当時存命の美術家の作品につけられた最高額でした。
ダミアン・ハーストは、イギリスの現代美術家です。ヤング・ブリティッシュ・アーティスト(YBAs)と呼ばれる、1990年代に頭角を現してきたコンテンポラリー・アーティストの中でも代表的な存在として有名です。特に"Natural History"という、死んだ動物(鮫、牛、羊)をホルマリンによって保存したシリーズが有名。輪切りや腐敗状態で放置された動物を扱う作品は、不可避である生や死を考える意図がありましたが、残酷さへの批判や芸術品には見えないなどという多くの非難も呼びました。イギリス国中にその悪名がとどろくようになったハーストは、1993年イギリス代表として国際美術展覧会ヴェネツィア・ビエンナーレに出展、縦に真っ二つに切断された牛と子牛をホルマリン漬けにした作品"Mother and Child, Divided"を出しました。この作品で1995年にはターナー賞を受賞しているなど、悪名高い代わりに評価も高いアーティストです。
リュック・タイマンスは、ベルギー生まれの画家です。人間と歴史の関係、そして人は歴史を無視できてしまうということ、また善悪の倫理などを軸に制作を行なっています。そのため、第二次世界大戦は彼の中でも大きなモチーフの一つです。ヨーロッパ具象画の中でも最も重要なアーティストの一人と考えられており、デジタルデバイス全盛の時代に、価値が失われたと目される伝統的なメディウムで表現を続ける作家の中でも意欲的な発表を続けてきました。
インド、ボンベイ(現ムンバイ)出身の現代彫刻家です。現代アーティストの中でも常に高い注目を集めているうちの1人です。ロンドンに在住。作品はシンプルな形状の立体かつ、表面に光を反射する金属や光を吸収する染料などを用いており、見る者の視覚に強い影響を与えるものが多いのが特徴です。「世界一黒い塗料」ベンタ・ブラックを使用した立体作品や、見るもの自身を映し出す《スカイ・ミラー》など、光・知覚・意識など人間の知覚現象を抽出した表現を数多く発表しています。
シモーヌ・レイは、アメリカのシカゴ出身の黒人女性アーティストです。彫刻・ペインティング・インスタレーション・映像・パフォーマンス・ソーシャルアクティビティなど、多岐の分野に渡る制作活動を展開しています。周縁化された黒人女性の社会活動を、社会の中心に再付置することを目標としアフリカン・アートやフェミニズムなども取り入れた活動を発表しています。2022年のヴェネツィア・ビエンナーレでアメリカ合衆国パビリオン代表として個展を開催し、メイン会場で発表された《Brick House》が最優秀賞を受賞するなど、今最も注目が集まっているアーティストの一人と言えます。
ルシアン・フロイドは、20世紀を代表する具象画家として度々名前が上がるアーティストです。1922年ベルリンで著名な精神分析家・ジークムント・フロイトの孫として生まれ、1933年にナチの迫害をおそれて家族はイギリスに移住しました。キャリア当初はシュールレアリスムなどの影響も受けていましたが、身近な人物を描いた独特の肖像画などに変化していきます。フロイドは非常に閉じた人間関係を好む人物で、家族や親しい友人などのみをモデルに、モデルの精神的な状態までも抉り出すような厚塗りの技法で緊張感のある絵画を多く残しています。苦痛に感じられるほど長くポーズを要求したりすることなどでも有名でした。
バンクシーは世界で最も有名なストリートアーティストです。街の壁に描かれた彼の作品は、複製されて様々なオークションで数百万ドルという高値で取引されています。しばしばその作品は社会問題に焦点を当て、強い政治的主張をメッセージとして含むようなものになっています。パレスチナ内戦、数々の紛争地での平和を訴えるようなグラフィティや、腐敗した政権を揶揄するようなステンシル作品が、発表されるたびに話題の中心となっています。近年では、オークションで売却された瞬間に自動で自らを切り刻むという仕掛けが施された作品などでも世間を騒がせました。
著者
TRiCERA ART
現代アートの歴史・楽しみ方・各アートジャンルの解説など、役に立つ情報を芸術大学卒業のキュレーターが執筆しています。TRiCERA ARTは世界126カ国の現代アートを掲載しているマーケットプレイスです。トップページはこちら→https://www.tricera.net
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