初回購入時に5%OFF & 送料無料

FIRSTART5

2回目購入時に使える10%OFFクーポンを初回購入後発行!

  • CURATOR’s EYE

レオナルド・ダ・ヴィンチの有名作品を解説!

2023/02/15
TRiCERA ART TRiCERA ART

1. モナリザ


(c. 1503–19)
世界で最も有名な美術品である「モナリザ」は、ルーブル美術館に毎日何千人もの来館者を集め、その神秘的なまなざしと謎めいた微笑みが鑑賞者の心を奪っています。
薄いベールを被り、地味な色彩に身を包み、宝飾品も身につけない若い女性の肖像画は、一見何の変哲もないように見えます。しかし、見る者を戸惑わせる効果を同時に持っていることも確かです。
この絵を実際に見た人が口を揃えて言うのは、「意外に小さかった」ということです。
実際、世界一有名な作品を見るために押しかけてきた群集と比べると、随分とこじんまりとして見えます。しかし、その小さな画面に、レオナルドの類稀な才能が現れていることも同様に確かに感じられるはずです。

被写体の顔は柔らかく描かれており、スフマート(線ではなく、光と影の微妙なグラデーションで形を表現する芸術技法)を巧みに操っていることがわかるでしょう。
また、繊細に描かれたヴェール、細かく編み込まれた髪、折り畳まれた布の丁寧な表現からは、レオナルドの観察を再現するためのたゆまぬ忍耐力が感じられます。
さらに、被写体の少し困惑したようにも見える表情が、リアリティをさらに高めています。彼女の笑顔は魅力的なのか、それとも嘲笑的なのか、人間同様、相反する特性を同時に体現する複雑な人物であるため、鑑賞者にはよくわからないのです。


2. 最後の晩餐


(c. 1495–98)
世界で最も有名な絵画のひとつである「最後の晩餐」は、ミラノ公爵ルドヴィーコ・スフォルツァが、ドミニコ会修道院のサンタ・マリア・デレ・グラツィエ教会に注文したものです。
この教会は、レオナルドの最初の滞在先であったミラノのパトロンでもありました。

マタイによる福音書では、イエスが使徒の一人が裏切ることを宣言し、聖杯を授ける場面が描かれており、この壁画において裏切りの場面は連続した物語として描かれています。
人の性格が姿勢や表情、しぐさに表れることに興味をもったレオナルドは、イエスからの宣言に対する弟子たちの反応をそれぞれ表情豊か・身振り豊かに描き分けています。
使徒たちの姿勢は上下し、伸び縮みし、絡み合いながら、中央に静かに座るイエスを中心に、ささやき、叫び、嘆き、議論しているように見えます。
テンペラや油絵の具を下地に2回重ねて塗るという実験的な画法だったため、完成後すぐに画面が剥離してしまいました。現在は修復がなされ、堅牢な耐久性を獲得しています。


3. ウィトルウィウス的人体図


レオナルドのドローイング「ウィトルウィウス的人体図」は、彼が壮年期に手元に置いていた多くのノートのうちの1冊に描かれていたものです。
そこには、紀元前1世紀にローマの建築家ウィトルウィウスが建築に関する書物で示した人間の理想的なプロポーションについて、鏡文字で書かれたメモが添えられています。
この絵は、ウィトルウィウスが「理想的な人間は円と四角という相容れない形の中に収まる」と説いたことを表しています。
そこでレオナルドは、両手を広げて正方形に収まるようにした男性と、両足を広げて円に収まるようにした男性の2つの姿を重ね合わせて描いたのです。
この作品からは、重要なテキストを理解しようとする努力だけでなく、それをさらに発展させようとする意欲も感じられます。
ウィトルウィウスの概念を描いたのはレオナルドが最初ではありませんが、数学、哲学、芸術の融合がルネサンスの象徴としてふさわしいこともあり、後にルネサンス期という時代を代表する最も象徴的な絵となりました。このドローイングは現在、ヴェネチアのアカデミア美術館に収蔵されていますが、通常は展示されず、空調管理されたアーカイブに保管されています。


4. 自画像


(c. 1490/1515–16)
長いウェーブのかかった髪と髭を生やした老人の赤いチョーク画は、長い間自画像とみなされてきたため、多くの人がレオナルドといえばこの絵を思い浮かべます。
しかし、ごつごつとした顔立ちに、眉をひそめ、うつろな目をしたこの人物は、レオナルドが67歳で没した年齢よりもずっと老けて見えると主張する学者もいるようです。
この肖像画は、彼がいつもノートに描いていたグロテスクな人物のスケッチのひとつではないか、というのです。
ともあれ、この肖像画は、他のレオナルドの美しい絵画とは一線を画し、画家の壮年期の気高さと知恵を感じさせるように見えます。


5. 岩窟の聖母


(c. 1483–86)
ルーヴル美術館にある《岩窟の聖母》は、ヘロデの「無辜の民の虐殺」からエジプトに逃れた聖家族と洗礼者ヨハネが出会うという、黙示録の伝説を描いた2枚の絵のうちの1枚だと、多くの学者が考えています。
この作品を依頼した無原罪の聖母教会との間で長年にわたる訴訟があり、その結果、レオナルドは1508年頃に別バージョンの作品を描き、現在はロンドン・ナショナル・ギャラリーに所蔵されています。

この1枚目の絵は、レオナルドがルネサンス黄金期の到来を告げるものとも言われています。
この時代の絵画は、人物を直線的に配置し、互いに分離し、硬い造形で描くことが普通でした。
しかし《岩窟の聖母》では、聖母マリア、キリストの子、幼子ヨハネ、大天使がピラミッド型に配置され、空間を占有するだけでなく、身振りや視線を交わし合っています。
若き日のマリアは、ルネサンス初期の絵画に多く描かれた玉座ではなく、神秘的な岩場の地面に座っています。
左側にひざまずいて祈る幼子ヨハネを守るように首を傾げ、右側の幼子キリストのもとへとなだめるかのように、彼女の身体は揺れているようです。
大天使は複雑なポーズでヨハネの方を指差し、見る者のほうをちらちらと見ながら、イエスがヨハネを祝福しています。またレオナルドは、マリアとキリストには光輪、ヨハネには杖という伝統的な聖なる象徴を排除し、聖家族が神々しくなく、より人間的に見えるように工夫しています。


6. 女性の頭部


1500–10
ペインティングの小作品です。
首をかしげ、目を伏せた若い女性が描かれています。その姿は、レオナルドの《岩窟の聖母》に描かれた聖母マリアを思わせ、同じ女性がモデルとなった可能性があると考えられています。
この絵の愛称である「La scapigliata」は「だらしない」と訳され、若い女性の髪の束が乱れていることを指しています。
髪の束や肩はゆるやかに描かれていますが、顔は完成度が高く、重いまぶたから柔らかな唇まで、女性の繊細な顔立ちを優しくモデリングしています。
この作品からは、表現力豊かなストロークで輪郭をかたち作り、慎重にコントロールされた描写で細部を表現するという、レオナルドの卓越した技術が見て取れます。


7. 白貂を抱く貴婦人


(c. 1489 - 1491)
《白貂を抱く貴婦人》に描かれている若い女性は、レオナルドのパトロンであるミラノ公ルドヴィーコ・スフォルツァの愛人、セシリア・ガレラーニだとする美術史家が多い。
白貂は公爵の紋章としてよく使われました。
女性は右を向き、その輝く瞳はフレームの外の何かに向けられているように見えます。
この絵は、背景を暗くするなど、かなり筆を重ねられていますが、それでもレオナルドの解剖学的な知識と、姿勢や表情といった人物表現力がよく表れていると言えます。
怜悧な顔立ち、注意深い視線、そして堂々と首をかしげ警戒している白貂を優しく抱く姿は、貴婦人の若さと気立ての良さを表しています。
彼女の細い手は、皮膚の下にある複雑な骨格を示し、またオコジョの頭は、精巧に描かれた毛皮の下にある頭蓋骨をも感じられるようです。


8. サルヴァドール・ムンディ


(c. 1500)
2017年、サルバトール・ムンディ(1500年頃、「世界の救世主」)肖像画がオークションで4億530万ドルという記録的な価格で落札され、大きな話題となりました。
サルバトール・ムンディは状態が悪く、真贋性に疑いがあり、その真正性が学者や評論家の間で議論の対象となっていたことを考えると、この高値にはより一層驚かされます。
多くの識者が、イエスの顔を表現する技術の低さ、ルネサンス期の巨匠の特徴である体をひねるポーズとは全く異なる固い姿勢、説得力のないガラス球の表現、もし固ければ、持ち主が歪んで映るであろう、レオナルドが知っていたであろう光学トリックなどを指摘しています。
しかし、出品したクリスティーズは、このような批判を一蹴し、手際の悪さは前世紀の大修復の結果であり、イエスの右手の柔らかい造形やタイトカールの繊細さなどはレオナルドの技法に似ていると述べました。
また、保存修復師は、この絵がレオナルドと同じ材料で描かれていることを確認したとし、特にウルトラマリンは、名人だけが使う高価な高品質の青色顔料であることを主張しました。
真贋性に関わらず、この作品への関心とオークションでの高額な落札額は、レオナルドの不滅の名声と、死後5世紀の美術史における彼の強力な地位を証明するものだったことは確実でしょう。


9. ジネーヴラ・デ・ベンチの肖像


(c. 1474/78)
ワシントンD.C.のナショナル・ギャラリーに展示されているジネヴラ・デ・ベンチの肖像は、西半球で常設展示されているレオナルドの唯一の絵画です。
この作品は、レオナルドが20代前半に完成させた初期の作品であり、彼がそのキャリアを通じて用いることになる型破りな手法の一端を垣間見ることができます。
北欧の画家たちに影響を受けたレオナルドは、伝統にとらわれず、荘厳な若い女性を通常の横顔ではなく、4分の3の位置から見たポーズで描いており、このような構図を描いた最初のイタリア人画家であったと考えられています。
その後、モナリザを含むすべての肖像画に4分の3像が採用され、肖像画のスタンダードとなり、今日でも当たり前のように使われています。
また、絵の具の表面に指紋が残っていることから、レオナルドはまだ絵の具が固いときに指を使って描いていた可能性も指摘されています。

裏面には、月桂樹と棕櫚の花輪がジュニパー(イタリア語でジネプロ)の小枝を囲み、「美は徳を飾る」と書かれたラテン語の巻物がそれぞれの植物に絡み付いています。
裏面は切り詰められたような形をしており、水や火による被害で絵の下部が切断された可能性も考えられています。
裏面の肖像画にはジネヴラの手が描かれていたのではないかと推測する学者もおり、ウィンザー城に所蔵されているシルバーポイントの腕と手の習作が下絵として使用された可能性もありそうです。


10. 聖アンナと聖母子


(c. 1503–19)
《聖アンナと聖母子》はレオナルドの最後の作品とされています。
この作品は、聖アンナ、その娘である聖母マリア、そして幼子という三世代の聖家族を、レオナルドがこれまで確立してきた定型表現で描いたものであるとみなされることが通常です。
ピラミッド型構図の頂点に立つアンネは、膝の上に座るマリアを見つめ、聖母が子羊に乗るキリストを優しく制止しています。
《岩窟の聖母》で描かれた物知りの幼児レオナルドとは対照的に、《聖母子とアンヌ》のキリスト像は無邪気で、遊び心のある幼さを見せ、母の視線を受け止めながら信頼に満ちた表情をしているようにも見えます。
親密さを感じさせる人物同士のやりとりは、説得力のある人間関係を表現するレオナルドの力量を表しています。

また、3次元の空間を2次元で表現することに生涯こだわり続けたレオナルドの姿勢もうかがえます。
また、多くの作品に見られるように、幻想的な風景の中に人物を配した作品でもあります。彼は『絵画論』の中で「空気遠近法」という技法を用いて、背景の岩山が手前の風景よりも青白く見えるように描き、距離感を表現しています。
《モナリザ》や《岩窟の聖母》など、初期の作品の風景画の多くにこの技法が用いられています。

TRiCERA ART

著者

TRiCERA ART

現代アートの歴史・楽しみ方・各アートジャンルの解説など、役に立つ情報を芸術大学卒業のキュレーターが執筆しています。TRiCERA ARTは世界126カ国の現代アートを掲載しているマーケットプレイスです。トップページはこちら→https://www.tricera.net