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MADARA MANJI | アーティストインタビュー Vol. 02

2022/12/26
TRiCERA ART TRiCERA ART

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杢目金を使った、独自のバランス感覚と強烈な存在感を持つ作品を持つ立体作品で知られる作家、MADARA MANJIさんにインタビューを行いました。
周囲の空気をも支配するような複雑性をはらんだ作品を作るアーティストは、どのような思いで制作を行なっているのでしょうか。

アーティスト:MADARA MANJI
聞き手:Asako Tamoto (TRiCERA)

—簡単な経歴をお聞きしてもよろしいでしょうか。


東京生まれで、幼稚園から不登校になっちゃって。なんとか高校までは卒業しました。
不登校であまりちゃんと教育も受けておらず、美大進学とかはしてない。19歳の時に、京都の金属工芸の職人に弟子入りして、二年間修行しました。その後29歳までは独学で勉強しつつ、実質ニートのような生活を送ってました。29歳で今のWhitestoneGalleryにスカウトしていただいて、いろんなところで展覧会を開いて今に至ります。

—最近はどのようなスタイルで活動されていますか?


デビュー前と後でかなり変わってますね。デビューしてからは今のアトリエに住み着いて、毎日作品を制作していました。年に何本か国内国外での展示があるので、作品制作に明け暮れている毎日ですね。 海外のアートフェアやグループ展、スイス、香港、台湾、アメリカ、上海、シンガポールなど色んなところで作品を発表しています。なので常に作品をつくっています。


—MANJIさんの作品の中で、杢目金(もくめがね)という技術が使われているのは大きな特徴だと思います。杢目金を使おうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
(杢目金=何層もの金属素材を加熱圧着し、彫りや捻りなどを加え、木目状の模様に仕上げる技法)

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Ambivalence #12 「 反復と差異と反復 」| 2021 | Copper, Silver, Gold, Concrete, Stainless | 260 × 320 × 410 mm

杢目金というのはレアテクニックで、昔はできる人はあまりいなくて。ある程度以上のクオリティで作成できる人は少ない。
金属の加工方法は攻撃的なアプローチなんですよね。1000度の熱で加熱し、たたき込んでいく。熱すぎると溶けるし、叩きすぎると割れるし、かといって温度が低いと造形できないし、叩く力が弱いと加工できない。破壊と表裏一体の、強烈なエネルギーを与え続けることではじめて造形されていくんです。あるいはそれに耐えうる強度があるからこそ造形されていくという金属が持つ条件が、人間のメンタリティと同じだと思った。そこにロマンを感じたんです。
自分は学生時代ずっと不登校だったんです。小さい頃から人間社会が理解できなくて、まだ動物とかのほうが共感できました。人間社会は倫理や概念が複雑に混ざっていて、基礎教養なしには理解が難しかった。 自分では自らは動物に近いと思っていたが、やはり人間と動物は違います。決定的な違いは何かと思ったら、それは想像力だったんですよ。
僕の得意なこととして、想像力といった領域があった。それは人間特有の力で面白いと気づいた。 想像力や、探究心をもっと勉強したいと思い、どうにかそれを可視化できるようにしたい、オブジェクト化したいと思った。 10代後半になってそれがアーティストというフレームが合うんだろうと理解して、アーティストになることを決めました。
コンセプトとしてやってみたかったことは、とにかく何でもいいから複雑に混ぜるということ。人間の内面は複雑です。色々な感情がありますよね。トラウマとコンプレックス、ゆえに願望がまざっていたり。
技法については、最初は粘土などを使ってみましたが、粘土って混ぜると、混ざってて当たり前感がすごいんですよ。混ざったらいけないもの同士が混ざり合うのが人間性で、それを表現したかった。

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Uncovered Cube #110 | 2022 | Copper, Silver, Gold, Brass | 180 × 180 × 180 mm

—MANJIさんの作品は、「人間」が題材なのでしょうか?

「人のありさま」ですね。代表的なシリーズのキューブ型の作品は、人の核を表しています。杢目金って、性質の違う金属を混ぜれば混ぜるほど反発しあって割れるんですよ。性質が違うものが混ざっていると、まるで磁石が反発しあっているようないわば磁界性を持つようになるんです。その時金属には自ら反発して分離しようとする力が強く内包されていて、それをさらに上回る力で一つのカタチに結束させられているということです。人の心も一緒だと思う。自分の場合、強烈な矛盾が内側から生成されて、それに負けるとダウンしてしまう。負けなければ、その矛盾を上回ってちゃんと自分でいられる。そういった、金属の反発力と人間の反発力を重ね合わせたテーマで作品を作っていますね。


—次に、作品を作る時のきっかけについてお聞きしたいです。作る時は、何か感情が湧き上がってそれを具現化するためにつくられているんでしょうか?

自分は結構ややこしい性格をしていまして、常にいろんな感情が混じり合ってて。
人が生きていくのって、そういうことじゃないでしょうか?長い目で見た時に、そもそも人は矛盾を抱えていて生きづらいし、人間の想像力と探究心がもたらすものってネガディブなものだと思っているんですよ。想像力があるから疑念が湧くし、探究心があるから願望も湧く。願望が裏切られると失意が湧き、達成されないとコンプレックスが湧くし悔しさが出るし。
そういったものを抱えるにはあまりにも人間の心は弱い。生きてて負けそうになる時の方が多いのに、生きていかなきゃいけない。その複雑なメンタリティをもってる人間を人生として考えた時に、本当にいろんなものが混ざっていて。
自分の作品は直立してる角度が全部アンバランスで、重心を底のほうに集めて立つようにしてるんですけど、なんで立っていられるのかわからないと言われる作品が多くて。要は、何かが複雑に入り混じったものが、なんで立ってられるのかわかんないけどめっちゃ頑張って立ち続けてるみたいな状態なんです。これを、人の心の様とか人生の質感っていうのを表現したくてやっている。

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Revision #09 | 2020 | Paper, Acrylic, Stainless| | 285 × 390 × 40 mm


—アートには何を求めていますか?MANJIさんにとって価値あることとはなんでしょうか?

生きる理由をくれる作品が自分にとってのいいアートですね。生きる上で必要な、目に見えない力。ちょっとバカっぽいけど勇気とか!あとは、やる気。そういったものを与えてもらったとき感謝をするし、それがアートの価値だとやはり思います。


—作品を通して、鑑賞者に何を伝えたいですか?

人間として生きる理由と意義ですね。人間が人間的に生きる行為の中には、暴力性や凄惨さ、無関心といったものがどうしても出てくる。そういったネガティブなものと同時に、逆にポジティブなものも絶対あるんだけど、ネガティブな方しか見えなくなってしまって生きていく理由を見失う人が多いと思う。自分もわかっていなかったですし。なんとなく働いて、なんとなくお金を稼いで、なんとなく貯金して、なんとなく納税して、なんとなくいいものを買って…。そういうのが人生だと俺は思わないんです。人間的に生きるとはどういうことなのかっていうのと、人間的に生きていく意義というのを俺はずっと知りたかった。 それを可視化したオブジェクトを通じて他者にそれを伝えられたら、すごくいいなと思います。


—本日は、ありがとうございました。


現在MADARA MANJIが参加予定の展覧会情報はこちら。
I LOVE SINGAPORE
会場 / Whitestone Singapore
形式 / グループ展
会期 / 2023年1月6日(金)スタート、会期終了日未定
時間 / 11:00 - 19:00


アーティストプロフィール

MADARA MANJI

1988.3.28 東京都出生。
東京都内の高校を卒業後、作品制作の為の造形技術を習得する為19歳の時に京都の彫金職人に師事。
数年間に渡り基礎的な金属の加工技術を学び、23歳の時に独立。
東京都品川区にアトリエを構え作品を制作、現在に至る。
Whitestone Gallery - MADARA MANJI Profile

展示歴
≪個展≫
2017 Antagonism and Transcendence / Whitestone Gallery KARUIZAWA
2020 VORTEX / Whitestone Gallery KARUIZAWA
2020 ACCUMULATION / Whitestone Gallery Taipei
2020 MASS / Whitestone Ginza New Gallery
2021 CORE / Whitestone Gallery Taipei
2022 EXPLOSION / Whitestone Ginza New Gallery

≪グループ展≫
2017 INTERMIXTURE / Whitestone Gallery HongKong Hollywood Road
2018 HEBIME MADARAMANJI 二人展 Archetype / Whitestone Gallery KARUIZAWA
2019 Neo-Materialism / Whitestone Ginza New Gallery

≪アートフェア≫
2017 ART NAGOYA 2017 / Whitestone Gallery KARUIZAWA
2017 ART FAIR ASIA FUKUOKA 2017 / Whitestone Gallery KARUIZAWA
2018 VOLTA 14 / YOD Gallery
2019 KUNST RAI 2019 / YOD Gallery
2020 art TNZ / YOD Gallery
2021 Art Fair Tokyo 2021 / YOD Gallery
2021 Art Miami 2021 / YOD Gallery
2022 Art Fair Tokyo 2022 / YOD Gallery
2022 VOLTA BASEL 2022 / YOD Gallery
2022 Fine Art Asia 2022 / Whitestone Gallery
2022 Art 021 / Whitestone Gallery
2022 Art Miami 2022 / YOD Gallery

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著者

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現代アートの歴史・楽しみ方・各アートジャンルの解説など、役に立つ情報を芸術大学卒業のキュレーターが執筆しています。TRiCERA ARTは世界126カ国の現代アートを掲載しているマーケットプレイスです。トップページはこちら→https://www.tricera.net